研究課題/領域番号 |
13J06172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢澤 亜季 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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キーワード | 都市化 / 心理ストレス / ソーシャルキャピタル / 中国 |
研究実績の概要 |
代表者は、中国海南島における急激な経済発展が農村部コミュニティ居住者に与える健康影響を明らかにすることを目的に、海南島内陸部に位置する農村部居住者を対象にこれまで4年間研究を続けてきた。 これまでに、経済発展に伴う生活様式の変化と心理的健康との関連を検討した。生活様式の変化のうち、食事内容の変化と耐久消費財の所有について、それぞれ豚肉消費量と携帯電話使用料を指標として使用し、心理ストレスレベルのマーカーであるEpstein-Barr virus(EBV)抗体価との関連を調べたところ、豚肉消費量とは正の、携帯電話消費量とは負の関連が見出された。コミュニティの外での就業機会やソーシャル・ネットワークの拡充が現在の人々の関心事となり、心理的健康を決定する重要な要因になっていると考察できる。また、生活様式の変化の中の異なった側面を切り出すことにより、心理的健康に対する異なる影響を評価することの重要性が示唆された。以上の結果を、筆頭著者としてAmerican Journal of Human Biologyに投稿した。本発見を社会学的視点からより詳細に説明するため、ソーシャル・キャピタルや、出稼ぎ等の“都市的”な経験を評価し、サンプル数を増やしてさらに検討する計画である。 また、心理ストレスの客観的指標であるEBV抗体価と、主観的健康感の指標であるWHOQOLについて相関があるか検討した。その結果、身体的QOL、心理的QOLがEBV抗体価と負の関連を持つことが明らかになった。この結果に関して論文をAmerican Journal of Human Biologyに投稿した(第2著者)。さらに、出生月を出生時の感染源への曝露、栄養状態の代理指標とし、心理ストレス下での炎症の程度、ひいては免疫系の発達が出生時の環境要因によってどのように異なるか、炎症のマーカーであるC-reactive protein(CRP)濃度を用いて検討した。この結果をまとめた論文を投稿し、現在レビューを待っている(筆頭著者)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初の予定では中国海南島にて濾紙血サンプリング、聞き取り調査、バイオマーカー測定を行う予定であった。しかし、安全上の理由から、研究協力機関の判断により海南島での調査を中止せざるを得なくなった。新たな調査地として福建省農村部を選定し、福建医科大学の協力のもと、平成27年5月に濾紙血サンプリング、聞き取り調査、バイオマーカー測定を実施することになっている。
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今後の研究の推進方策 |
調査地の変更や、調査時期の9ヶ月の延長があったが、カウンターパートや協力者と綿密に打ち合わせを進めており、調査の遂行には問題がないと考えている。必要な統計分析手法の習得、文献レビュー等は完了しているので、サンプリングが終わり次第論文の執筆を開始できる。
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