代表者は、中国海南島における急激な経済発展が農村部コミュニティ居住者に与える健康影響を明らかにすることを目的に、海南島内陸部にてこれまで研究を続けて来た。本研究は、海南省疾病予防コントロールセンターと東京大学大学院人類生態学教室の共同研究の一部として実施されたものである。 本年度は、当初の予定では中国海南島での濾紙血サンプリング、聞き取り調査、バイオマーカー測定を行う予定であった。しかし安全上の理由から、2度の延期ののち、研究協力機関の判断により現地調査を中止することとなった。そのため新たな調査地として福建省を選定した。福建医科大学の協力のもと、平成27年4月に予備調査、7月に本調査、バイオマーカー測定を実施することになっている。 調査予定の変更に伴い、2010年に海南島で行われた調査のデータを用いて、成人において心理ストレスによるC-reactive protein 濃度の増加と生まれ月との関連を検討した。生まれ月は、妊娠後期~生まれた時期の環境要因を反映すると考えられており、特に感染症の多さや栄養状態の違いなど、免疫系の発達と関連のある要因を反映しており、その影響は生涯にわたって続くことが予想される。分析の結果、海南島においては雨季生まれの人の免疫系の発達がよく、心理ストレス下にあってもCRPの増加が見られなかったが、乾季生まれの人ではそれが見られた。また、年齢層によってその関連が異なり、衛生環境の改善や生活様式の多様化が進むことで、生まれ月が反映する要因そのものが変化していくことが示唆された。結果を筆頭著者として論文にまとめて投稿した。
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