研究課題/領域番号 |
13J06234
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
伊藤 元裕 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD)
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キーワード | ヨーロッパヒメウ / 集団採餌 / GPSロガー / ビデオロガー / 繁殖成績 / 採餌場所 / 餌獲得 / 血縁関係 |
研究概要 |
本研究の目的は、ヨーロッパヒメウが行う集団採餌がもつ機能を明らかにし、その生態学的意義を世界に先駆けて明らかにすることにある。そのため、GPSおよびビデオロガーを用いて、群れの行動を詳細に測り、その餌獲得量や繁殖成績をることでこうした目的を達成することを目指している。25年度には、当初の計画通り、イギリススコットランドのメイ島においてフィールド調査を行った。このフィールド調査によって、ヨーロッパヒメウに18個体にGPSロガーと加速度・深度・温度ロガーを1週間装着して長期間における行動データの回収に成功した。また、10個体に加速度・深度・温度ロガーとビデオロガーを最大で2日間装着して、採餌行動の詳細記録を得た。更にそれらの、繁殖成績のデータも収集できた。 GPS調査では、2つの離れたサブコロニー間で9羽ずつの個体を捕獲してそれぞれの採餌場所を特定した。これは、巣場所の位置関係が個体毎の情報交換にいかに作用するかを明らかにする上で非常に重要なデータである。結果、2つの離れたサブコロニー間で、採餌場所に差は見られず、どの個体も島から北方向にあるイギリス本島の沿岸よりの14km以内の海域を利用していた。今後、個体毎の巣の距離と採餌場所・採餌タイミングとの関係や血縁関係とそれらとの関係について分析していく計画である。 ビデオロガーの調査では、20mを越える深い潜水が多く見られ、捕獲された餌は、カジカ類、ギンポ類、カレイ類など底魚ばかりであり、通常多く利用されているとされるイカナゴは一度も観察されなかった。イカナゴ潜水の際は、群れ採餌が多く行われることが報告されているが、今年度は、群れ採餌を記録することはできなかった。2013年のメイ島では過去10年で最悪の繁殖成績が記録されており、その関連について検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、イギリスでの調査を計画通り行い良好なデータを得るとともに、各共同研究者との打ち合わせによって研究の深化や共同研究体制の強化を図った。こうした成果により、26年度には、本格的な調査を行うことができる体制が整った。また、25年度のデータの内容も良好であり、論文化が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度には、3次元加速度を高頻度に長時間記録できる新型のロガーを入手することが可能となったことで、これを使って、ヨーロッパヒメウが採餌トリップ毎にどのくらいの餌を得ていたのかを連続してモニターすることが可能となった。これにより、個体毎が自分および他個体の餌獲得量状況に応じてどのようにふるまいを変化するかについて検証することが可能になる。これは、本研究テーマの最も重要なデータとなると考えられる。 26年度は、概ね良好に計画を進めたが、海鳥の繁殖状況がここ10年で一番悪いという状況であり、少々調査に制限を加える必要があった。より繁殖状況の悪化があると計画通りに調査をすることが困難となることもあるが、その点は、現地の共同研究所と打ち合わせを重ね、柔軟に対処していく。
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