本研究の目的は、国内および国際社会の情勢による自己決定権の制限から21世紀の植民地主義のメカニズムを解明することにある。最終年度である本年度は、ハワイのカナカマオリの自決権の阻害を反基地運動に着目し、既存の研究を調査し、現地調査を行った。カナカマオリの自決権の阻害に関しては、米国に併合された歴史的背景を踏まえ、それが現代の反基地運動にどのように関係するかを検討した。 ハワイ州は20.6%が米軍基地となっている。そのうちの56%の土地がハワイ王国の土地であった。ハワイに米軍基地が建設されて以降、いくつかの米軍基地は、カナカマオリの反対運動で閉鎖された。しかし、2001年以降のハワイの米軍基地は、「対テロ戦争」の影響もあり強化されている(主な資料:米国政府のNational Defense StrategyならびにQuadrennial Defense Review Report)。一方で、20世紀後半からカナカマオリの政治家がカナカマオリの権利を保護する目的でアカカ法制定に向けて取り組んできた。しかし、この法律に関しても米国政府が優位となるようなものになり、カナカマオリが主張している権利とかけ離れる恐れが懸念事項にあげられる。また、2014年後半から陸軍基地の縮小が米国政府によって検討され始めているが、ハワイの産業の第2位が米軍基地となっており、多数派である移民はそこから利益を得ているため、米軍基地を容認することに繋がっている。さらに、米国によるハワイ併合や移民受け入れによってカナカマオリの人口は減少している。そのため、手続き的民主主義制度によってカナカマオリが自決権を行使することは難しい状況である。 最後に、現地調査を行ったことで国際的にカナカマオリの権利回復を訴える人権活動家兼ハワイ大学講師と共同研究を進めていくことになった。これは、今後の研究へと繋がる実績である。
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