研究課題/領域番号 |
13J06298
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 翔 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | long noncoding RNA / 白血病幹細胞 / マイクロアレイ |
研究概要 |
適切な同意の取得に基づき、臨床検査のため採取された急性骨髄性白血病骨髄検体の一部を研究に供し、CD34陽性CD38陽性分画とCD34陽性CD38陰性分画に分離して保存を行った。目標であった3例の検体を得ることが出来たが、いずれもCD34陽性CD38陰性細胞が少量であり、次世代シーケンサーを用いたRNA-Seq解析を行うのに十分な検体量を得ることが出来なかった。そこで、既存のアレイ解析のデータを用いて造血器腫瘍に特徴的な発現パターンを示しているlong non-coding RNA (lncRNA)の候補を抽出し、それらの発現を臨床検体およびマウス白血病モデルで検証した上で機能解析を行っていく方針とした。骨髄異形成症候群(MDS)と正常骨髄を比較した、lncRNAを含む網羅的発現解析公開データであるGSE51757を用いて、MDS4例と正常4例との間で平均発現量に8倍以上の差があるlncRNAの候補を抽出した。その結果、MDSで発現が低下しているlncRNAの候補として10個、またMDSで発現が亢進しているlncRNAの候補として3個が抽出された。このような、造血器腫瘍で大きく発現の変化しているlncRNAの中に、腫瘍の治療抵抗性や再発に関わっている幹細胞分画で特に発現が大きく異なっているlncRNAがあるのではないかと考え、これらのlncRNAの発現を腫瘍幹細胞を多く含む分画で観察することにした。 そのために、このような腫瘍幹細胞を多く含む分画が同定されているマウス白血病モデルであるMLL-ENL白血病を、MLL-ENLをレトロウイルスベクターで導入した骨髄幼若血球の移植によって発症させ、腫瘍幹細胞を多く含むと考えられるLin-cKit+Sca1-CD16/32+CD34+(L-GMP)分画とそうでない分画に分けて十分量の細胞を保存した。このサンプルを用いて、GSE51757から得られたデータの検証を行い、L-GMP分画で特徴的な発現パターンを示したlncRNAについては、保存してある臨床検体での検証に進むほか、機能解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保存した検体量が少なく、予定していたRNA-seqはできなかったが、アレイのデータを用いることで腫瘍抵抗性や再発に関わっている可能性のある候補を挙げることができた。これらのバリデーションには、それほど多くの検体量を必要としないため、今後は、当初の計画通りに進展すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
候補のバリデーションができ次第、マウス白血病発症モデルにおいて、noncoding RNAのshRNAを導入し、白血病幹細胞分画の動態に与える影響を解析する。また、In vitroのマウス造血細胞不死化の実験系も用いて同様にnoncoding RNAのshRNAを導入し、白血病遺伝子による造血細胞不死化に及ぼす影響を解析する。 このようなnoncoding RNAの全長を同定し、発現ベクターを構築する。
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