研究課題
正常核型のde novo急性骨髄性白血病(AML)症例の中で単因子解析で高発現が予後不良と相関するとされた7つのlncRNAについて高発現の意義を解析するため、CRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトベクターを構築しAML細胞株への導入を試みたが、導入効率は不良であり十分な細胞数を取得することができなかった。そこで、レンチウイルスベクターでlncRNAのshRNA発現ベクターを作製し、RNAiによる発現抑制を行った。AML細胞株Kasumi-1、 THP-1を用いてRNAi導入を行い、50-70%の発現量の抑制が得られたが、細胞周期回転や薬剤抵抗性などAMLの幹細胞と関係する特性に変化を認めなかった。細胞株を用いた解析では意義を正確に評価できない可能性が考えられた。私の所属する研究室では一部の白血病細胞について疾患細胞由来iPS細胞の樹立に成功しており、疾患由来iPS細胞から分化誘導した血液細胞は、一般的な細胞株よりも疾患細胞自体に近い特性を有する、より良い疾患の細胞モデルであると考えられている。私は、白血病の一種である慢性骨髄単球性白血病(CMML)由来iPS細胞を用いて、CMMLの患者検体で高発現している遺伝子の一つがCMML細胞の生存や増殖に極めて重要である可能性を見出した。通常、iPS細胞はフィーダー細胞上でVEGFにより刺激することで造血前駆細胞に分化誘導する。しかし、ある遺伝子の発現を抑制したCMML由来iPS細胞では、造血前駆細胞への分化が著しく障害されることがわかった。この遺伝子の発現量はCMML以外の疾患細胞や正常造血細胞では少なく、特異的に重要な働きをしている可能性がある。この遺伝子の発現抑制時に発現が大きく変動するlncRNAに関して解析を行う。現時点では候補遺伝子を抽出した段階で、今後急性白血病発症の系を用いて意義を追究するつもりである。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Jpn J Clin Oncol
巻: 45 ページ: 745-8
10.1093/jjco/hyv071.
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