研究概要 |
爆発判定法の改良 : 研究実施計画において記述した圧縮性Navier-Stokes系についての爆発判定法の改良を行った. 運動方程式に対するエネルギー型の先見的評価を精密に行い, Sobolev臨界型の補間不等式を適用することで判定条件の位相を弱めた。上記の結果は論文として受理されている. 圧縮性Navier-Stokes-Poisson系の時間局所的適切性 : バロトロピック条件の下, クーロンポテンシャルによる外力を流体の運動量の釣り合いに含めた, 圧縮性Navier-Stokes-Poisson系(以下, (NSP))の初期値問題を考察した. この際, 流体運動に関して, Euler座標系とLagrange座標系の両方による定式化で適切性の問題を考察し, それぞれの設定で尺度臨界型Besov空間における(NSP)の時間局所解の存在と一意性を得た. 圧縮性Navier-Stokes系の時間局所的適切性 : 圧力に対する状態方程式として密度と温度両方に依存するpressurelawを考えると, 圧縮性Navier-Stokes系は, 密度と流速場の他, 熱力学的量によって表される. このような系はバロトロピック粘性流体と同様, 尺度普遍性を持ち, 臨界空間が自然に考えられる. 既存の結果では熱力学的量として, 温度や古典的なエネルギーを用いていたが, Lagrange座標系に書き直した上である種の改良されたエネルギー量を定義することで, 既存の結果に付随した技法的な難点(Besov空間における積の評価, 交換子評価, 最大正則性評価の限界)を回避することができた. バロトロピック流体は放物型・双曲型方程式の特性を引き出すため理論上重要だが, 現実のほとんどの流体は熱伝導を持つため, 応用上は温度変化を考慮に含めるのが理に適っている. 熱伝導流体に関する研究は当初の計画にはなかったが, 上の意味で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧縮性流体のポテンシャルによる外力が影響している状況を主に考え, 臨界型Besov空間の微分指数を負の指数まで下げることを目的としていた. これは適切な初期値の小ささの仮定, もしくは臨界指数より少し高い可微分性を仮定すると達成されることが判明した. この研究を基礎とし真空付きと外部領域への拡張を目指すため, 必要なステップである. また, 臨界熱伝導流体に関する研究は当初の計画にはなかったが, 圧縮性Navier-Stokes方程式のfullsystemの適切性の限界を探る研究として重要であるため, 研究は順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
(NSP)の適切性の研究後は, 非適切となるBesov空間を特徴付けることを当面の目的とする. 具体的には, 非圧縮性Navier-Stokes方程式における非適切性を示す手法に習い, 尺度超臨界であるような空間におけるnorm inflationを示したい. これに対応するfullsystemの圧縮性Navier-Stokes方程式に関する結果は知られているが, クーロン・ポテンシャルが影響する場合はこれより更に小さな空間におけるnorm inflationが示せると考えられる. また, (NSP)の解の特異性の形成に関する研究も平行して行う.
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