本年度における研究では、Kv1.2チャネルにおけるガンビエロールの結合部位同定を目指し、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いてKv1.2チャネル恒常発現細胞株を構築した。続いて、同細胞に対するパッチクランプ法を用いた電気生理学的実験により、Kv1.2チャネル阻害活性評価系を確立した。また、ガンビエロール構造単純化類縁体の構造を基盤とした光親和性標識化プローブ分子を設計し、銅触媒を用いたクリック反応を活用することで同プローブ分子の効率的な合成を達成した。さらに、合成したプローブ分子に対して、既に確立したKv1.2チャネル阻害活性評価系にて電位依存性カリウム電流阻害活性を評価した。その結果、同プローブ分子が中程度のKv1.2チャネル阻害活性を示すことを明らかとし、今後の結合部位同定に向けた化学的基盤を構築することができた。 また、ガンビエロール構造単純化類縁体を基盤とした分子プローブの合成過程において、中員環ラクトンより容易に合成できるチオアセタール及び対応するスルホンの官能基化による新規中員環エーテルの立体選択的構築法を見出し、その一般性を実証した。具体的には、チオアセタールに対し、N-ヨードコハク酸イミド存在下にアリルトリメチルシランまたはトリメチルシリルシアニドを作用させると、求核置換反応が進行し、対応する中員環エーテルを収率よく得ることができた。また、スルホンに対し有機アルミニウム試薬や有機亜鉛試薬などの求核剤を作用させることで、対応する中員環エーテルを得ることができた。本研究により、一般的に合成が難しいとされる中員環エーテルの、穏和な条件による立体選択的合成法を新たに確立できた。
|