【研究の目的】本研究では、“活動的なシナプスが選択され、非活動的なシナプスが除去される”という仮説に基づき、ニワトリ胚の毛様体神経節の杯状シナプスにチャネルロドプシン(ChR)を発現させ、光刺激を与え、シナプスを発火させることで神経活動を引き起こし、そのシナプスの電気的性質および形態を解析し、シナプス除去機構が活動依存的なのかを明らかにすることを目的としている。 【研究実施計画】本年度は特に下記2点、1.脳深部での神経活動を誘発させるための高感度ChR(SFO)の解析、2.脳深部に発現したChRを活性化させる近赤外オプトジェネティクスの構築に取り組んだ。 【研究の具体的内容、意義、重要性】1.高感度チャネルロドプシンの解析 哺乳類の脳に比べ、ニワトリ胚の脳は光透過性が良いため、本研究では脳外部から光刺激を行い、脳内部のChRを活性化することにした。しかし光は脳組織を通過することで減衰するため、非常に弱い光でも活性化することができるSFOの作製と解析を行った。解析の結果、SFOは弱い光でも活性化するが、そのためには長い光照射時間が必要であり、高頻度刺激には向かないことが判明した。2.そこで組織透過性の高い近赤外光と、近赤外光エネルギーを吸収し、可視光を放出するランタニドナノ粒子を利用したオプトジェネティクスを構築した。今後、このランタニドナノ粒子を利用したチャネルロドプシンの光駆動を用いて、ニワトリ胚の杯状シナプスへの神経活動誘発を行い、シナプス除去が活動依存的か否かを検証する予定である。またこの方法は将来的に脳深部刺激等の医療への応用も期待される。
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