最近の世界的な穀物需給のひっ迫状況を鑑みると、現状の我が国の畜産を、自給飼料基盤に立脚した家畜・家禽生産体系へとシフトさせることは喫緊の課題である。これには我が国の水田が持つ機能をフル活用し、トウモロコシを中心とした輸入飼料の代替としての米の利用を拡大させていく必要があると考えられる。本研究では、暑熱感作時でも全粒籾米の潜在力を最大に発揮できる飼養技術を開発するため、暑熱環感作時における全粒籾米の給与が肉用鶏の生産性ならびにストレス応答におよぼす影響を明らかにするとともに、その作用機序の一端を解明した。まず、慢性暑熱感作時における籾米飼料給与時における成長低下が何によってもたらされるのかその要因を検討し、これには飼料中の高い油脂含量と籾米(籾殻)が関与していることを示した。次いで、慢性暑熱感作時における油脂含量の高い籾米飼料給与による成長低下機序を推定した。すなわち、腸管において形態損傷、バリア機能低下、免疫応答亢進が生じることで、腸内細菌由来内毒素ならびに炎症性サイトカインが門脈から肝臓へ流入し、続いて肝臓において酸化ストレスが発症し、さらには全身の酸化ストレス状態および炎症応答が亢進していることを示し、これら一連の反応によって 成長が低下することを明らかにした。さらに暑熱曝露した鶏の腸管における種々のストレス反応には、腸内細菌叢変化も関与している可能性を示した。加えて機能性資材トレハロースを籾米飼料へ添加し、慢性暑熱感作時における籾米給与による成長低下の改善効果を実験的に示した。本研究は飼料用米の家禽産業への積極的利用を加速させていく上で重要な情報を提供すると考えられる。
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