直近の国勢調査の結果によれば、単身世帯が夫婦と子供から成る世帯を超え、世帯構成は従来と比べて大きく変化しつつあるが、顕著な都市地理学的問題であるにも関わらず、大都市圏における世帯構成の地理的な変化に関するメカニズムは十分には明らかにされていない。そこで本研究では、日本の二大都市圏を対象として、戦後における世帯構成の地理的変化を分析し、そのメカニズムを明らかにする。そのために、A : 核家族世帯の地理的変化に関する分析、B : 単身世帯の地理的変化に関する分析、C : 二大都市圏における世帯構成の地理的変化に関する総合的な分析、という3つの作業課題を設定し、平成25年度は、主に作業課題AおよびBに取り組んだ。 作業課題Aに関して、『全国学校総覧』に掲載された公立小学校の児童数の情報を利用し、大都市圏郊外の一部をなす大阪府北部を事例とした分析を行った。分析の結果、高度成長期までの郊外化の進展とその後の停滞、そして、主要駅周辺における近年の局所的な人口増加を、一連の公立小学校児童数データから読み取ることができた。この成果はIGU 2013 Kyoto Regional Conference(国際学会)で発表した。 作業課題Bについては、単身世帯に関する詳細な小地域統計が集計、公表されている川崎市を事例として、近年の年齢構成の変化に関する詳細な分析を行った。その結果、近年の単身世帯の年齢は上昇傾向にあるものの、主要駅周辺では社会人単身世帯向けの賃貸住宅の供給が進み、年齢層の上昇が抑えられていることが明らかになった(日本地理学会2013年秋季学術大会で成果を発表)。また、この分析結果を踏まえ、総務省統計局によるオーダーメード集計サービスを利用し、2000年および2005年の国勢調査結果に関して、単身世帯に関する詳細な統計表を作成した。これらの統計表は、市区町村単位で集計されているものの、職業や年齢階級、従業上の地位など多様な属性によるクロス集計がなされた膨大なデータである。
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