研究課題/領域番号 |
13J06505
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
田中 彩香 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 量子ビット / 核スピン状態制御 / ELDOR-NMR法 / 超微細禁制遷移 / 量子状態制御 / 電子-電子二重共鳴 |
研究概要 |
分子内のスピンを量子ビットとして使用するためには、緩和時間内で多くの操作が必要となるため、操作時間の短縮は重要である。高強度のRFパルスを用いたパルスENDOR法による核スピンの量子状態制御と比較し、MWパルスを用いた核スピンの状態変換では、変換にかかる時間の大幅な短縮や、超微細禁制遷移の制御を通してgn因子の小さい核も扱うことができると期待されるため、メリットが大きい。本報告者は2種のマイクロ波周波数を用いるパルス電子−電子二重共鳴(ELDOR)法を適用することにより、電子−核スピン状態のMWパルスによる状態制御技術(ELDOR-NMR法)の開発と高速制御を目的として、同位体置換ジフェニルニトロキシド2種の希釈単結晶を用いた単結晶パルスELDOR法による電子−核スピン量子状態の評価法を検討した。今回、ELDOR-NMRスペクトルの角度依存性の詳細な検討を行った。角度依存スペクトルの測定に際しては、分子の配向性の違いによるスペクトルの重なりを防ぐため、Echo検出ESRスペクトルで検出されたシグナルの最も高磁場側において、ELDOR-NMR法を適用した。15N核スピンが測定可能であれば検出されると予測できるENDORスペクトルのシミュレーションを行い、測定されたELDOR-NMRスペクトルと比較した結果、同様の変化が見られ、結晶におけるどの角度においても、ELDOR-NMR法によって15N核の情報が得られることを示した。また、ELDOR効果の定量的検討より、ELDOR-NMR法の適用において、最も効果的な結晶方向がb軸上から10度a軸側にずれた状態であると予測した。単結晶が混在する双晶のELDOR-NMRスペクトルでは、各々の単結晶に由来するシグナルの重ね合わせとして多数のシグナルが観測され、複数の結晶の解析を同時に行えることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単結晶ELDOR-MMR法によるスペクトルの角度依存性の解析を行い、分光学的見地から、ELDOR効果によるシグナルのNMR遷移との関連性を明らかにし、量子状態制御に有利な配向を推定することにも成功した。また、2つの単結晶が重なった状態において同時測定が行えることを提唱した。 選択的操作が行えれば、分子設計により単結晶試料中で主軸配向の異なる多数の電子スピンや核スピンを利用することが可能となり、量子ビットを増設につながる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基に、演算に有利な配向において高周波のみで行う電子―核スピン状態の制御を行い、量子情報処理における演算を実証する。 また、双晶に由来する結晶のELDOR-NMRスペクトルの詳細な解析を進めると共に、各シグナルに対応する遷移の選択的操作を試み、ビット増設が物理的手法で簡易に行えることを示す。
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