本研究(「地方自治体における人事管理の動態と公務員の技能形成」)は、①職員の技能形成やモチベーション維持、ひいては、公共サービスの質・量にも影響を及ぼす重要性を持ちながら、外部からの観察が極めて困難な組織の内部管理である人事管理の変化や安定性を捉えること、②行政組織における人事管理の動態がもたらす公務員の技能形成への影響の同定、という大きく二つの課題を有している。今年度は、 1)人事管理のシステムレベルの変化を観察するとともに、2)中でも人事異動にスポットを当て、その変化と安定の論理を、実証的に探究し、3)さらに、技能形成に与える影響を調査する前提として、公務員の技能論に関する文献レビューに取り組んだ。1)については、「東京都における能力・実績主義的人事管理の歴史的基礎」として『東京大学行政学研究会』(東京、2014年2月)において報告をする予定であった(悪天候で4月に順延の上、実施)。2)については、まず、『行政共同研究会』(東京、2013年7月)において「人事異動の構造とその論理 : 東京都幹部職員人事を題材に」として人事異動構造に関する報告を実施するとともに、学術論文「人事異動における構造とその論理 : 東京都における管理職人事(1993~2004年)を題材に」として、日本行政学会の機関誌である『年報行政研究』(ぎょうせい)に投稿した。同論文は、査読を通過し、2014年5月に同誌に掲載される予定である。さらに、内外環境の影響を受けつつ、四つの異なる価値の緊張関係の中で形成される、人事異動の制度と実践に関し、都を題材に"Human Resource Development for Managing 'Giants' through Job Rōtation : An Empirical Assessment of the Tokyo Metropolitan Government"(ジャカルタ、2014年8月)として報告を行う予定である(受理済み)。3)のレビューも堅実に進行し、2014年度以降のインタビューおよびアンケート調査の基礎として、利用されることとなる。マクロな人事制度の変化だけでなく、人事異動という個別施策の実証研究に取り組みつつも、理論的な蓄積を並行させた。2014年度以降は、理論的蓄積と実証研究の連結、職員の技能論と人事制度との連結、に取り組むこととなる。2013年度は、その基礎構築期であった。
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