研究課題/領域番号 |
13J06578
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
青島 麻子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 国文学 / 源氏物語 / 婚姻 |
研究概要 |
本研究では、第1に、精緻な史料調査により、婚姻の観点から11世紀前後の時代状況を総体的に把握することを目指し、第2に、上述の成果を踏まえて平安朝物語の精読を行い、虚構の論理を浮かび上がらせることを目指している。 第1の史実調査については、従来の国文学から歴史学へと研究の場を移し、史料解読の方法を学んだ。特に本年は、本研究で中心に据えている11世紀前後に成立した古記録である『小右記』の精読作業を行った。 第2の物語精読における成果の代表としては、今年度中に入稿(掲載決定済)した論文「婚姻慣習と源氏物語―紫の上の結婚経緯をめぐって―」がある。これは、諸説紛々たる様相を呈する『源氏物語』の婚姻慣習に関する諸議論の整理を行い、特に正妻か否かという点において未だ定解を見ない紫の上の描かれ方に焦点を当てて考察したものである。具体的には、婚姻制度の観点のみで物語内の婚姻形態を裁断しようとする従来の研究方法を退け、物語の文脈に即した検討を付すことで、婚姻という観点から『源氏物語』の虚構の論理を指摘した。以上の考察方法は本研究における基本方針であるが、婚姻研究史において特に議論が錯綜してきた紫の上に着目し、その描かれ方の両義性を指摘できたことは、今後の研究の礎ともなる重要な成果であると考えている。また本研究では、1つの作品のみならず、複数の物語との比較分析によって『源氏物語』をはじめとする平安朝物語作品を包括的に捉えることを目的としているが、図書『芸術教養シリーズ9日本の芸術史文学上演篇1歌・舞・物語の豊かな世界』での原稿執筆においては、平安時代の作品全般を対象としてその概要を記すことで、自分なりの読みを再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は今後の研究の基盤として、古記録の調査・精読を行うことを目標としていたが、古記録読解作業は、概ね予定通りに進展している。各データベースや索引類を入手したことで、研究基盤も整い、効率よく作業を進められるようになったと思う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に蓄積したデータをもとに考察を進め、成果を論文としてまとめ始めることに努めたい。その際、特に『源氏物語』以降の後期物語に焦点を当てることで、新たな読みを提示できるのではとの見通しを立てている。 なお、本研究においては、歴史学・社会学・人類学などとの学際的交流が必要不可欠である。特に今後は、ジェンダー論の隆盛により活発化している女性史・家族史に関する議論への目配りをも心がけていきたい。
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