研究課題
本研究は三角格子・正方格子を持つ遷移金属カルコゲナイド化合物の電子状態を光電子分光などの様々な手法を用いて軌道状態と超伝導の関連を調べることが目的である。平成25年度は三角格子系Ir_<1-x>Pt_xTe_2及び正方格子系Fe_<1-y>TM_ySe_<1-x>T_x (TM=Mn, Ru, CO, Ni, Cu, Zn)などの系について研究を行った。三角格子を持つIr_<1-x>Pt_xTe_2は構造相転移及び超伝導を示す物質である。構造相転移や超伝導の起源を明らかにするために角度分解光電子分光を行い、三次元的なフェルミ面の観測を行った。その結果、非置換試料(x=0.00)については構造相転移前後で明瞭な軌道対称性の破れを観測した。一方、Pt置換した超伝導試料(x=0.05)は完全に構造相転移が消失しており、この系においても同様の測定を行った結果、構造相転移に起因する軌道対称性の破れは観測されなかった。これらの結果は高温相の安定化が超伝導の出現に重要であることを示している。また、スピン軌道相互作用が重要であるという示唆的な結果も得られた。これらの結果についてはJournal on the Physical Society of Japan, Physical Review Bに掲載されている。正方格子を持つFe_<1-y>TM_ySe_<1-x>Te_xは超伝導と構造相転移及び反強磁性を示す物質である。様々な遷移金属置換や配位子置換による電子状態への影響を調べるため、角度分解光電子分光、X線光電子分光、X線吸収分光を行った。その結果、遷移金属置換により特異な電子状態の変化を観測した。
2: おおむね順調に進展している
三角格子系については構造相転移に起因する電子状態の変化や置換効果を調べ、その結果について投稿論文として発表することができた。正方格子系については遷移金属置換効果が系にどのように影響するのか明らかにすることができた。
Ir_<1-x>Pt_xTe_2については特に超伝導の起源を直接的に探るためには超伝導ギャップの直接観測が必要である。超伝導転移温度が~3.1Kであることから十分な冷却と高分解能を持つ装置で角度分解光電子分光測定を行う必要がある。Fe_<1-y>TM_ySe_<1-x>Te_xについては遷移金属置換における異方性が期待されるため、フェルミ準位近傍の角度分解光電子分光をより詳細に行い、遷移金属置換による異方性について解析する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 033704-1-4
10.7566/JPSJ.83.033704
Physical Review B
巻: 89 ページ: 104506-1-4
10.1103/PhysRevB.89.104506
巻: 82 ページ: 093704-1-4
10.7566/JPSJ.82.093704
巻: 82 ページ: 074708-1-5
10.7566/JPSJ.82.074708
巻: 82 ページ: 104714-1-4
10.7566/JPSJ.82.104714
巻: 88 ページ: 224517-1-4
10.1103/PhysRevB.88.224517