研究概要 |
本研究は, ナノ流路とナノ流路を挟み込むように作製したナノギャップ電極を有する検出部によりウイルスの電気インピーダンス信号を検出し, 電気等価回路モデルを用いた解析を行いて等価回路パラメータを抽出することで, 電気インピーダンス信号から各ウイルスの成分・構造を識別する手法を確立することを目的としている。 平成25年度には, (1)ナノ流路内送液性の改善と(2)ナノ空間インピーダンス測定によるウイルスセンシングの有効性の検討を行い, 以下の結果を得た。 (1)ボンディングプロセスなど作製プロセスの改善を行い圧力印加時の溶液リーク低減を行うことで, 圧力によりナノ流路内への送液・流路内の流量の制御が可能となった。 (2)ナノギャップ電極部分にウイルスを含むサンプル溶液を滴下しナノギャップ電極間を溶液で満たした後にインピーダンス測定を行い, 電気等価回路モデルを用いて大きさ・形状の異なる5種類のウイルス(インフルエンザウイルス, Qβファージウイルス, GAファージウイルス, バキュロウイルス, タバコモザイクウイルス)の電気抵抗成分, 電気容量成分の解析を行った。解析の結果, 電気抵抗はウイルスの大きさにおおよそ比例した値を見せた。また細長い形状をしているウイルスは, 球状に近いウイルスよりも比較的高い電気容量値を見せた。これらの結果から, ナノ空間でのインピーダンス測定により, ウイルスの形状・大きさによる情報を得ることができることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノギャップ電極を用いてウイルスの大きさ・形状による電気的信号の違いを検出することで, ナノ空間インピーダンスによるウイルス検出の有効性を実証することができた。圧力送液を行うことで送液性・流量の制御性は向上したが, ナノ流路内でウィルスが詰まったり, ナノ流路入口付近でウイルスが流路壁面に付着するといった課題は未だ残っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はウイルス粒子を流路内に流してナノ流路内での電気的検出の実証を試みる。ナノ流路内にウイルス粒子を流すことができていないという課題に対して, 高圧力に耐えるようボンディングプロセスを更に改善し, また生体材料の吸着防止に効果があるMPCポリマーをナノ流路内にコーティングするなど表面処理を行うことで対応する。ナノ流路内にウイルス粒子を流しウイルス1個からの電気的信号を検出した後, ウイルスの大きさ・形状・構造などの違いによる電気信号の違いを解析していく。
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