研究課題/領域番号 |
13J06605
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
羽月 竜治 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インピーダンス計測 / ウイルスセンシング / ナノギャップ電極 |
研究実績の概要 |
ナノギャップ電極を用いたウイルスセンシングの有効性を検討するために,ナノギャップ電極を埋め込んだ石英基板上にシリコーンゴム製測定チャンバーを設けたデバイスを用いて,インピーダンス計測を行った。ナノ流路を用いた単一粒子計測でなく,電場中に多粒子が存在し得る計測となっている。インピーダンス計測に関しては,大きさや形の異なる3種のウイルス(バキュロウイルス,タバコモザイクウイルス,インフルエンザウィルス)を,それぞれウイルスのみを含むよう予めフィルタリングし,バッファ溶液を1 mM KCl溶液で置換したサンプル溶液を用いた。500 nmギャップのナノギャップ測定電極を用いて,ウイルス濃度を変えながらインピーダンス計測を行ったところ,計測場に粒子数個程度が存在すると推定されるウイルス濃度においてもインピーダンス信号を検出できた。従って,ナノギャップ電極を活用した高電場下でのインピーダンス計測により,ナノ流路内での単一粒子計測においてもウイルスを検出できる可能性を示したといえる。ナノギャップ電極間での高電場(数百kV/m以上)により生じる誘電泳動力によって電場の集中する電極エッジ付近へと粒子が引き寄せられ信号が増幅されたと考えられる。また,ウイルスの種類によって固有のインピーダンス信号を検出でき,インピーダンス実部・虚部のピーク値とピーク周波数から濃度に依存せず3種のウイルスを識別できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナノ流路内の送液性,計測に用いるためのウイルスサンプルのフィルタリングに課題があり,これらの解決に取り組んでいたため,インピーダンス計測と解析は予定よりも進んでいないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ナノギャップ電極から得られるインピーダンス計測を行い,ウイルスの大きさ・形状を識別する手法の確立を目指す。昨年度までに開発した,石英ガラス基板にナノギャップ電極を埋め込んだ測定デバイスを用いて,予めウイルスのみを含むようにフィルタリングしたウイルス溶液のインピーダンス計測を行う。計測したウイルスの電気インピーダンスを誘電緩和理論に基づき解析し,ウイルスの電気的パラメータの抽出を行う。
ナノギャップ電極を用いれば,電極破壊を起こさない程度の電圧で高電場を生じさせることができるが,この高電場中での誘電泳動を利用したインピーダンス計測の高感度化も検証する予定である。
また現状では,ウイルス粒子を含むサンプル溶液をナノ流路内に流して計測を行う際に,ナノ流路内にウィルス粒子が詰まる問題が生じており,これを解決するために,ナノ流路表面への親水性ポリマー材料のコーティングを検討している。
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