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2014 年度 実績報告書

8-11世紀イングランド統一過程再考とブリテン諸島史、ヨーロッパ中世史への再定位

研究課題

研究課題/領域番号 13J06606
研究機関東京大学

研究代表者

内川 勇太  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードアングロ・サクソン / ブリテン / 初期中世 / マーシア / イングランド / 王権
研究実績の概要

本年度は学会・研究会での報告、史料・学術書の翻訳作業を中心に研究を行った。国内で3回の報告があった。またイギリスでは国内で入手できない文献を収集し、昨年度知遇を得た研究者との交流を深めるとともに、新たな人脈も形成することができ、留学に向けて準備を進めつつある。
王権の伸長過程に関しては、アングロ・サクソン諸王国の形成過程と関連させて論じるため、フイッチェ王国をとりあげ、その起源、支配者、民集団、地理的広がりについて考察した。そして群小諸国がやがて少数の大国に統合されていく過程を明らかにすることで、イングランド統一に至る歴史的展開の前史を整理することができた。
貴族研究についてはアングロ・サクソン時代初期の諸王族が王国間、王家内の競合によって、貴族という王族から一段劣った地位へと変質してゆく過程に着目した。教会研究については特にローマ教会がブリテン島を司教区に分割し、階層構造を構築してゆく過程と諸王国の形成過程に相当程度の関連が見いだされるため、この点を切り口としてイングランド統一に教会が果たした役割を検討した。
また本年度は文献をさらに充実させることができ、研究環境は引き続き向上している。特にブリテン諸島の歴史的展開を把握する上で言語の果たした役割の重要性を改めて認識し、ブリテン島における俗語文学、俗語とラテン語、韻文と散文、口承と記録に関する文献を収集し、古英語・古アイルランド語の学習を継続して行っている。
最後に、本研究課題が対象とする8~11世紀のブリテン諸島の邦語の概説書は皆無と言える中で、最新の知見・方法論を反映した『オックスフォードブリテン諸島の歴史』第三巻の翻訳に携わったことは我が国におけるヨーロッパ初期中世史研究のみならず、文字史料に偏重することなく物質文化にも大いに配慮した研究手法の紹介・提示という点で、歴史学一般に寄与するものであると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イングランド王権の伸長過程についてはその前史としてのアングロ・サクソン諸王国の形成過程について、特にフイッチェ王国を事例として、群小王国から少数の大国への統合過程を整理した。貴族研究については上記の統合過程に伴う、王族から貴族への変質の実態について扱った。教会研究については教区への分割と諸王国の成立を連関的に考察した。
また本研究は主に政治史、制度史に着目するものであるが、今回翻訳作業を通じて、ブリテン島の景観、領主制、社会階層やその衣食住、手工業・商業活動等の社会・経済史的側面について学ぶ機会を得た。それによって王権や貴族が拠って立つ社会へと視野が広がり、当初の研究目的を達成するためにも有益であった。

今後の研究の推進方策

フイッチェ王国の研究によって明らかになったアングロ・サクソン初期の王国の成立過程を「トライバル・ハイデッジ」という史料に当てはめることで、8世紀までの諸王国の成立と相互の関係、政治秩序の実態について論じる。更に可能であれば、従来のアングロ・サクソン(ゲルマン)とブリトン(ケルト)という対比的な枠組みを廃し、特定の地域がたどった歴史的展開を新たな視点で考察する。その際考察に値する地域としてはブリトン系のキリスト教が継続した一方で、ローマ教会とアイルランド教会が競って布教に努めた現在のミッドランド西部にほぼ相当する地域をその一例として挙げることができる。
また引き続き古英語、古アイルランド語に加えて、古・中ウェールズ語、古ノルド語の習得に努める。
上記のテーマをはじめとして研究成果を論文、翻訳、新刊紹介等を通じて公表してゆく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 「7~9世紀のフィッチェの人々の王国Provincia Hwicciorumにみる中世初期ブリテンの政治集団の広域秩序の統合過程」2014

    • 著者名/発表者名
      内川勇太
    • 学会等名
      お茶ノ水女子大学新井・鶴島ゼミ合宿
    • 発表場所
      奏山荘(熊本県阿蘇郡高森町)
    • 年月日
      2014-10-06 – 2014-10-06
  • [学会発表] 「7世紀から11世紀にかけてのウースター司教区/フウィッチェ王国:政治的変遷を超えた連続性の考察」」2014

    • 著者名/発表者名
      内川勇太
    • 学会等名
      イギリス史研究会
    • 発表場所
      明治大学(東京都千代田区)
    • 年月日
      2014-06-14 – 2014-06-14
  • [学会発表] 「7世紀から 11 世紀にかけてのフイッチェ王国/ウースター司教区」2014

    • 著者名/発表者名
      内川勇太
    • 学会等名
      西洋中世史研究会
    • 発表場所
      お茶の水女子大学(東京都文京区)
    • 年月日
      2014-05-31 – 2014-05-31
  • [図書] 『ヴァイキングからノルマン人へ』(オックスフォード ブリテン諸島の歴史 第3巻)2015

    • 著者名/発表者名
      ウェンディ・デイヴィズ編、鶴島博和監訳、内川勇太、小澤実、田付秋子、成川岳大、堀越庸一郎、森貴子、梁川洋子訳
    • 総ページ数
      印刷中(第4章担当)
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会

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公開日: 2016-06-01  

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