1.紅茶ポリフェノールの化学的解明:糖および脂質吸収抑制作用を持つことから注目されている紅茶の高分子ポリフェノールは生成機構も化学構造も明らかになっていなかった。本研究では、茶カテキンから高分子ポリフェノールが生成する反応を酵素および銅イオンを触媒とする酸化反応を考案して再現し、製造したさまざまな高分子ポリフェノールを、紅茶高分子ポリフェノールとスペクトルを比較検討し、これまで推定していたカテキンのB環同士の結合だけでなく、B環とA環の間の結合生成の可能性が明らかになった。 2.嫌気的条件下での茶発酵によるカテキンの代謝産物:茶葉を嫌気的条件下で乳酸菌類と発酵させることでヒト腸内細菌によるカテキンの代謝と同じ還元的反応が起こることを明らかにし、さらに関連する反応性生物を数種分離構造解析した。 3.新たな機能性カテキン誘導体の創出:これまでの研究成果から、カテキン分子と天然精油の反応性を利用した脂溶性カテキン誘導体の製造法が開発されているが、生成物の組成が複雑であるため個々の成分を純粋にして利用するには不適であった。そこで本研究では脂溶性カテキン誘導体の医薬品としての利用を想定して、非天然成分をリンカーとしてさまざまな脂溶性カテキンを合成する方法を考案し新たな機能性カテキン誘導体の合成に成功した。共同研究グループにより、アルツハイマー病の脳内で低下するネプリライシン酵素活性を一部の脂溶性カテキン誘導体が増強することが明らかにされた。
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