研究課題/領域番号 |
13J06615
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷崎 佑弥 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 汎関数繰り込み群 / フェルミオン多体系 / 超流動 / クロスオーバー |
研究概要 |
強相関多体系の物性を理解するうえで必要な道具である場の量子論の非摂動論的な取り扱いは未だ困難な点が多い。本年度の研究では主に汎関数繰り込み群(FRG)による非摂動論的場の理論の取り扱いをBCS-BECクロスオーバーを通して重点的に調べた。 BCS-BECクロスオーバーの定性的な側面は、平均場近似を用いた解析により大まかな枠組みは分かっている。そのため新しい理論をこの系に応用することで、理論を発展させるべき道筋が明確になり、理論の新しく応用のある手法を開発することができる。その一方で、BCS-BECクロスオーバーの定量的な側面は未解明の部分も多く、ここに開発した新たな理論と手法を応用することで、BCS-BECクロスオーバーの物理自体に対しても理解を深めることができる。 フェルミオン多体系の超流動転移の定性的性質はBCS理論で普遍的に記述され、更に定量的な議論をするにはGorkov補正を加える必要がある。本年度の研究では、補助場によるCooper対や複合ボソンの自由度を導入しないFRG (f-FRG)を発展させ、f-FRGとBCS理論およびそのGMB補正の関係を明らかにした。さらに、通常は議論が難しい自己エネルギー補正の効果もf-FRGに取り込み、その相転移温度や化学ポテンシャルへの影響をFRGの観点から明確にした。その一方で、理論にフェルミオンの自由度しか陽には含まないf-FRGを用いてBEC側の物理を議論することは一般に困難であったが、four-fermion vertexに赤外正則化を導入するvertex IR regulatorを用いたf-FRGを開発し、この困難を解消した。 これらの研究結果を応用して、f-FRGの解析手法がNSR理論(NozieresとSchmitt-Rinkにより提案されたBCS-BECクロスオーバーを有限温度の場の理論で記述する基本理論)とどのように関係するのかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は汎関数繰り込み群(FRG)を冷却フェルミオン系に応用した。そのなかで、ボソン化を導入せずにFRGをフェルミオン多体系に応用する手法としてfermionic FRG (f-FRG)を提案し、BCS-BECクロスオーバーに適用した。BCS側では、弱結合領域でのGorkov補正のf-FRGからの導出とそこからの自己エネルギー補正の影響を調べた。BEC側では、vertex IR regulatorを導入するという新しい提案を行い、複合粒子系をボソン化に頼らずに記述する上での困難を解消した。これらの研究をまとめることにより、f-FRGによりBCS-BECクロスオーバーを調べるための枠組みを新たに作り上げることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で構築したf-FRGの手法を応用して、BCS-BECクロスオーバーの定量的な研究をまとめる。その上での原理的困難は初年度の研究ですべて解決されているため、いかに系統的な計算を行えるかという点に着目して研究を進めていく。 また、最近の場の量子論における非摂動論的手法の発展が様々な方面からなされていることを考慮して、より系統的な理論的手法を構築する。これらの手法を、より複雑な相互作用をする系に適用していく予定である。
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