研究課題/領域番号 |
13J06641
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
網本 直記 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | 幹細胞 / 肝細胞 / 人工肝臓 / バイオリアクター / 分化誘導-------- |
研究概要 |
本研究では、中空糸/オルガノイド培養を用いたマウスES細胞の肝分化誘導過程において誘導される肝細胞の定量評価を行った。これまでに確立した肝分化誘導法を適用することで肝細胞への分化と肝機能発現は確認していたが分化誘導率は不明であった。そこで本検討では、成熟肝細胞マーカーとしてアルブミンを用いて、フローサイトメトリー解析を行うことにより、肝分化誘導率の定量評価を行った。その結果、肝細胞の出現時期・割合を明らかにした。 また、マウス多能性幹細胞を用いた検討により確立した中空糸/オルガノイド培養法を用いた肝分化誘導法をヒトiPS細胞に適用し、ヒトiPS細胞の肝分化誘導に取り組んだ。マウス多能性幹細胞とヒト多能性幹細胞では、一部性質が異なるため、この点を踏まえてヒトiPS細胞の肝分化誘導条件の最適化を行った。特に、ヒトiPS細胞は単一分散化後の増殖能低下が著しい。そこで、まず、中空糸内部でヒトiPS細胞が良好に増殖可能な培養条件を検討した。単一分散後の細胞死を抑制する因子としてROCK (Rho-associated coiled-coil formlng kinase)阻害剤を添加した培養培地で培養・播種を行うことで細胞死を抑制し、ヒトiPS細胞の中空糸内培養が可能であることを見出した。次に、マウス多能性幹細胞を用いた検討で得られた知見を基に、肝分化誘導因子を添加し、肝分化誘導を行った。細胞密度変化、肝特異的遺伝子及び肝特異的機能の発現について解析を行った結果、分化誘導2週間目よりアンモニア除去能やアルブミン分泌能といった肝特異的機能の発現を確認した。また、その機能発現レベルは、ヒト初代肝細胞充填時の約1/2であった。以上の結果より、中空糸/オルガノイド培養を利用した多能性幹細胞の肝分化誘導法はバイオ人工肝臓開発の基盤技術として有望である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、中空糸内部におけるマウスES細胞から肝細胞への分化誘導率を明らかにし、ヒトiPS細胞から肝細胞への分化および肝機能発現を確認した。次年度の研究に必要な知見は十分に得ることが出来たと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、中空糸内部において、マウスES細胞から肝細胞への分化誘導過程における肝分化誘導率の定量評価およびヒトiPS細胞から肝細胞への分化誘導を行った。その結果、マウスES細胞では、分化誘導過程における肝細胞の出現時期や割合が明らかになった。また、ヒトiPS細胞は中空糸/オルガノイド培養法を用いて肝細胞への分化誘導が可能であることを明らかにした。今後は、分化誘導因子の添加時期や組み合わせなどの培養条件や、初期の播種条件の最適化を行い、更なる機能向上を試みる。また、得られた知見を基に、さらに高性能な人工肝臓装置の開発を行う予定である。
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