研究課題
これまでに,運動による神経新生の促進効果はアンドロゲン受容体の拮抗薬投与に消失し、その効果は神経細胞の増殖ではなく、分化や生存に顕著であることを明らかにした。今年度は、海馬の神経幹細胞培養系を立ち上げ、アンドロゲンが神経分化に及ぼす影響について検証した。実験では、成体から採取した神経幹細胞にアンドロゲンの活性体であるDHT(dihydrotestosterone)を10nMもしくは1μM添加した。その結果、10nMを添加した時に、神経細胞のマーカーであるβⅢ-TubulinやアストロサイトのマーカーであるS100βおよびGFAPの遺伝子発現が高まった。この時、BDNF(脳由来神経栄養因子)やその受容体のTrkBも増加する傾向にあった。低強度運動が海馬の神経新生を高める背景には、アンドロゲンによるBDNF発現の増加が関与しているのかもしれない。培養実験に加え、昨年度の引き続きアンドロゲン受容体(AR)を神経特異的に欠損させた遺伝子改変(コンディショナルノックアウト:AR-CKO)マウスの作成を並行して行った。凍結胚から個体化したアンドロゲン受容体(AR)floxマウス(昨年度報告済)とNestin-Creマウスと交配し、神経特異的にAR受容体欠損したCKOマウスを作成を試みた。譲渡してもらったNestin-Creマウスの凍結胚が機能しない、交配がうまく進まないなど問題はあったが、最終的にタモキシフェン誘導性のAR-CKOマウスを得ることができた。今後、このAR-CKOマウスの例数を増やし、運動で増加する海馬神経新生におけるアンドロゲン受容体の役割を明らかにし、研究を発展させる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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