本研究の目的である、個体での解析を可能にする新たな分子プローブの開発を目指し、アミノペプチダーゼをターゲットとした、動的核偏極法(DNP)を用いる核磁気共鳴分子プローブの開発を行った。アミノペプチダーゼは、がんを含む様々な疾病との関連が示唆されている酵素であり、この酵素を解析することができる分子プローブを開発することができれば診断等への応用が期待できる。アミノペプチダーゼを解析するために様々なアプローチが試みられてきたが、マウスや人と言った個体内のアミノペプチダーゼの解析は難しい。そのため、個体の解析へ向けた新たな分子プローブが求められている。 今年度は研究計画に沿い、新たな小分子ユニットを探索し、アミノペプチダーゼをターゲットとした分子プローブの設計・合成を行った。縦緩和時間(T-1)の比較から、1級アミドがアミノペプチダーゼ分子プローブの設計に有望であることが分かった。1級アミド構造を用いてロイシンアミノペプチダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼに対する分子プローブを設計・合成した。 合成した2種類の分子プローブの化学シフトを調査したところ、アミノペプチダーゼと反応することで、両者とも1.4ppm程度変化することが分かった。この結果は、MRIを用いたアミノペプチダーゼの反応解析が可能であることを示している。また、合成した分子プロープの緩和時間を測定したところ、個体の解析へ応用した場合もシグナルの観測が期待できる値を示した。マウスの肝臓や腎臓等の破砕液に分子プローブを加えても反応性を示すため、実際に個体に導入しても反応すると考えられる。最終目的である、個体での解析へ向け、期待の持てる実験結果を得る。
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