研究課題
脳腫瘍幹細胞(Glioma stem cells : GSC)に対して反復した治療刺激(放射線治療など)によって、どのようなヒストン修飾変化を呈して、それが抵抗性獲得に関わっているかを解明することを目的に研究を進めている。〈研究実績〉1、脳腫瘍幹細胞の放射線抵抗性獲得に関わる分子メカニズムの解析GSCの放射線抵抗性に関わる分子メカニズムを解明するために、以前に確立していたマウス放射線抵抗性GSCモデルを利用して、抵抗性に関わる分子メカニズムを解析した。その結果、GSCは反復放射線照射を受けると、IGF1-Akt-FoxO3a経路を介して幹細胞特性の増強と、放射線抵抗性の増強を引き起こすことを解明した。本結果は、当該領域のトップジャーナルの一つであるStem Cellsにて報告した。2、IGF1分泌脳腫瘍幹細胞モデルの確立GSCは反復放射線治療時に、IGF1分泌を介して抵抗性を獲得することが分かった。この結果を踏まえて、このフェノタイプ変化時のエピジェネティック変化を正確に評価するために、GSCに恒常的IGF1発現ベクターと、IGF1コンディショナル発現誘導ベクターを導入したモデル細胞を樹立した。3、ヒストン修飾関連分子の変化GSCが放射線抵抗性を獲得する際のエピジェネティック変化を解析するにあたり、予備実験としてRT-PCRアレイを利用したスクリーニングを行った。その結果、放射線抵抗性GSCにおいて4倍以上の発現量増加を認めたのが19個、4倍以上の発現量低下を認めたのを5個同定することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定している課題に対して順調に成果をあげている。その理由として、特に治療抵抗性に重要であるターゲット分子をIGF1に絞りこみ、今後のIGF1の解析を円滑に進めるための、コンディショナル発現モデル細胞樹立を行えたことがあげられる。また、ヒストン修飾変化へと解析を進める上での、スクリーニングでもいくつか候補分子を見っけられていることも、今後の進展を助けるものとなると期待される。
今後は、脳腫瘍幹細胞が放射線抵抗性を獲得するのに重要であるIGF1-Akt-FoxO3a経路の制御に関わるエピジェネティック変化を解明することを目的に実験を進める。特に、反復放射線照射時に起こるDNAダメージ反応が何らかのヒストン修飾変化を引き起こし、それがIGF1プロモーター領域のヒストン修飾変化を与えて、IGF1分泌調節をしているのではないかという仮説をもとに、解析を進める予定である。
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