研究課題
初年度にマウス放射線抵抗性株を利用することで、脳腫瘍幹細胞(GSC)が反復放射線照射中に放射線抵抗性を獲得していくメカニズムの一つとして、IGF1-Akt-FoxO3a経路の役割を解明した(Stem Cells, 2013)。この結果は骨肉腫の共同研究にも繋がり、さらなる成果を生みだした(Cancer Res, 2014)。本年は、IGF1の下流にまだ重要なメカニズムが隠されているのではと考えて、以前に確立したTS(コントロールGSC)とTS-RR(放射線抵抗性GSC)の比較解析を進めた。1、細胞接着に関わる遺伝子群の発現変化:治療抵抗性獲得において重要な生物学的遺伝子群は何かをマイクロアレイデータをもとにしたGene set enrichment analysisで解析した。TSとTS-RRの比較と共に、オープンデータソースより獲得した再発グリオブラストーマ患者のデータを解析に利用した。この結果では、二つのデータ群とも同様に幹細胞特性と細胞接着に関わる遺伝子群の発現が上がっていた。そこで、GSCの細胞接着の変化に注目することとした。2、細胞間接着と放射線抵抗性:細胞接着の変化を解析した。TS-RRはTSに比べて細胞間接着が亢進しているが、細胞外基質との接着は低下していることがわかった。また、細胞間接着の違うシングルセルクローンを複数獲得して、細胞間接着と放射線抵抗性の違いを比較したところ、細胞間接着が強いサブクローンほど放射線抵抗性が高いことが確認された。3、放射線抵抗性獲得において重要な細胞間接着分子の同定:上記のマイクロアレイデータを利用して、実際の再発グリオブラストーマで発現が亢進しており、さらにTSに比べてTS-RRで発現が亢進している細胞間接着分子のスクリーニングを行った。優位に発現上昇している細胞間接着分子を6個同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度には、脳腫瘍幹細胞が治療によってどのように変化するのかを明らかにしました(Stem Cells, 2013)。しかもその変化にはIGFシグナルが重要な役割を果たしていることを見出し、それは骨肉腫の共同研究にも繋がり、さらなる成果を生みました(Cancer Res, 2014)。さらに本年度は、放射線抵抗性脳腫瘍幹細胞モデルの解析をさらに進めることができて、幹細胞性ならびに細胞接着に関与する遺伝子の発現が亢進していることを見出し、治療耐性の本質に迫れるのではと考えている。計画以上に進展していると考える。
本年度のマイクロアレイデータ解析より、実際の再発グリオブラストーマで発現が亢進しており、さらに放射線抵抗性脳腫瘍幹細胞で発現が亢進している細胞間接着分子のスクリーニングを行えた。優位に発現上昇している細胞間接着分子を6個同定している。今後は、この分子が脳腫瘍幹細胞の放射線抵抗性獲得にどのように寄与しているのかを調べるとともに、IGF1シグナルとの関係を検証する。そして、最終的にどのようにこれらの変化がエピジェネティックにコントロールされているのかを解明する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Neuro Oncol.
巻: 16 ページ: 1048-1056
10.1093/neuonc/nou096
Cancer Res
巻: 74 ページ: 6531-6541
10.1158/0008-5472.CAN-14-0914