研究課題/領域番号 |
13J06705
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上田 学 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 映像学 / 映画史 / データベース / 近・現代史 / 地域研究 / 都市社会学 / 映画学 |
研究実績の概要 |
本年度は、大正期における日本映画の形成過程を明らかにするための研究として、二つの機関において調査をおこなった。一つは北九州市松永文庫であり、ここで北九州市において複数の映画館を経営していた興行師、中村上の旧蔵資料を中心に調査をおこない、情報を収集した。これより、福岡県で発行されていた業界誌『連合通信』等、地方における映画の興行状況を知るための新たな資料の所在が確認された。もう一つは、ボン大学における無声映画の弁士の音声が録音されたSPレコードの調査である。これらのSPレコードの一部について、デジタル音源化を進めて情報の収集をおこなった。この調査によって、『浪花女』(溝口健二監督、1940年)等、国内外にフィルムが現存しない、重要な日本映画のSPレコードが含まれていることが明らかになった。 さらに今年度に分析および考察をおこなった研究成果として、第一にサイレント時代からトーキー時代にかけての映画館の建築様式の変遷について、一次資料の調査にもとづき研究し、基調講演「上映空間の変容―サイレント時代からトーキー時代にかけて―」(Kinema Club Conference XIV)として発表した。この発表において、映画館の建築様式の変遷が、当該期の日本映画のスタイルの変化とも、密接に結びついていたことを明らかにした。第二に日本映画というナショナル・シネマの枠組みに関して、それを批判的に再考する試みとして、満鉄映画班に関する研究をおこない、分担執筆「芥川光蔵―忘却された記録映画作家」(『〈異郷〉としての上海・大連・台北』所収)として発表した。こうした〈満洲国〉に係る対象については、ナショナル・シネマとしての境界領域にあたっており、従来の日本映画史で主要なテーマとはみなされてこなかったが、本研究では、日本映画の形成過程という観点から分析が必要な分野として再考をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、無声映画資料の調査を継続発展させ、適宜その分析および考察の成果を発表しており、おおむね順調に研究が遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの二年間の研究成果を踏まえたうえで、日本映画の形成過程に関する複合的要因を、近代の都市空間と地域性、諸芸能との文化的複合性、輸入映画のヘゲモニーという三つの主題から、総合的に明らかにする。
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