研究概要 |
本年度は運動学習の統一理論モデルの構築に挑んだ。多くの運動学習モデルが提案されているものの(Thoroughman & Shadmehr, 2000, Nature, Smith et al.,2006, PLoS Biol)、現象Aを再現できるモデルAは現象Bを再現できない、など既存のモデルは対外に相反する。さらには、既存のモデルでは運動課題がランダムに切り替わると学習効果が高いという構造学習(Braun, 2009, Curr Biol)を再現できない。すなわち、既存の運動学習モデルは不完全である。 申請者は理論的に「運動する前から運動が成功するか失敗するか予測している」、すなわち「誤差の予測」を運動野のニューロンが表現していることが構造学習を再現するための必要条件であることを示した。事実、誤差の予測を表現しているニューロン活動が報告されていること(Popa, 2009, JNs)にも対応する。そして、ニューロン活動が誤差の予測により決定する運動学習モデルを構築した。提案モデルは構造学習を再現し、提案モデルでしか予測できない現象の妥当性を行動実験から示した。さらに、提案モデルは既存モデルが再現できる現象は全てパラメータを変えずに再現できることを確認した。すなわち、「誤差の予測」を取り入れた運動学習モデルは説明能力・予測能力において既存モデルを凌ぐことを示し、現状では運動学習の統一理論モデルの第一歩目となる可能性を示唆した。
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