研究概要 |
本研究の最終目的は, 強度1GPa伸び20%以上である高強度・易成形バイモーダル薄i鋼板を製造し, 高強度・易成形バイモーダル鋼材を自動車部品に適用することで, 車体の部材使用量の減少および燃費效率を向上させ, 自然環境の毀損の最小化, 省エネルギー化することにある. 具体的に説明すると, 1. 熱間加工シミュレーターにより最適加工条件の把握, 2. 熱間加工シミュレーターのデータを基にして幅拘束大圧下制御圧延機を用いて高強度・高延性を持つバイモーダル薄鋼板の製造, 3. バイモーダル薄鋼板の塑性加工特性の取得を行う. これらを調査することで, 実際に高強度・高延性の二つの性質を適切に組み合わせるバイモーダル鉄鋼材料を製造し, それらを産業に適用するための基盤研究を行う. 平成25年度 1. 熱間加工シミュレーター試験により最適加工条件の把握 (1)バイモーダル組織を形成する最適加工条件の探索 材料は主に低炭素鋼を用い, 熱間加エシミュレータ(熱間圧縮)を利用して種々の加工温度, 加工速度, 冷却速度などのパラメータを調整しながら実験を行い, バイモーダル組織を形成する最適加工条件を調査する. 組織の評価は結晶方位, ミスオリエンテーション, 集合組織などを組み合わせて金属組織学的に深く検討し, 低炭素鋼でのバイモーダル混合組織の形成機構について解明する. (2)内部組織の変化による機械的特性の調査 (1)の試験を用いて製造された試料の機械的特性を調査するため, 硬度試験及び引張試験を実施する. 硬度試験を通じて, 内部組織の変化に対する硬度変化を観察し, 引張試験施行の前に最大引張強度を予想する. その後, 引張試験を行い, 降伏強度, 最大引張強度, 均一伸び, 延伸率を調査する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S20Cについては, 高ひずみ速度付与試験設備での試験が終了した. 圧下率に対応した圧縮率は70%, 加熱温度は700℃~900℃の間について実験を行った. この試験によって, 800℃を上回る温度でバイモーダル組織の形成が始まり, 850℃の温度で数ミクロンの微細粒とサブミクロンの超微細粒からなるバイモーダル組織(平均粒径1.4ミクロン)が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年には幅拘束大圧下制御圧延機を用い, 易成形高強度バイモーダル薄鋼板の製造および塑性加工特性の把握する. 先に熱間加工シミュレーター試験により得られたデータを基にして, 幅拘束大圧下制御圧延を実施し, 理想的なバイモーダル組織を形成する圧延条件を定量化する. また, バイモーダル組織の持つ機械的特性(高強度・高延性)を把握するため, 引張試験, ビッカース硬度試験などを実施する. これらの実験から得たデータを解析することでバイモーダル混合組織が持つ特異な特性を探求する. その上, 多様な加工条件により作られた試料の塑性加工特性の把握する. 幅拘束大圧下制御圧延により製造された幅100mm高さ1~3mmの薄鋼板を用い, 深絞り, エリクセン実験を行うことでバイモーダル組織の成形性を調査する. また, 実験された試料の組織と成形性の関係について定性・定量的な評価をすることで産業界にバイモーダル組織の薄板鋼板の適用可能性を見極める.
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