本研究の最終目的は,強度1GPa伸び20%以上である高強度・易成形バイモーダル薄鋼板を製造し,高強度・易成形バイモーダル鋼材を自動車部品に適用することで,車体の部材使用量の減少および燃費效率を向上させ,自然環境の毀損の最小化,省エネルギー化することにある. (2年目)幅拘束大圧下制御圧延機を用い,易成形高強度バイモーダル薄鋼板の製造および塑性加工特性の把握 (1) 幅拘束大圧下制御圧延機を用い,バイモーダル組織の製造条件におけるデータの定量化:熱間加工シミュレーター試験により得られたデータを基にして,幅拘束大圧下制御圧延を実施し,理想的なバイモーダル組織を形成する圧延条件を定量化する. (2) 多様な加工条件により作られた試料の塑性加工特性の把握:幅拘束大圧下制御圧延により製造された幅100mm高さ1~3mmの薄鋼板を用い,深絞り,穴広げ,エリクセン実験を行うことでバイモーダル組織の成形性を調査する. ○ 研究の状況 幅拘束大圧下制御圧延機により加熱温度・冷却手法・圧下率など多様なパラメーターを変化させて圧延した低炭素鋼(S20C・S25C)の内部組織を検討した結果から,目指しているサブミクロンサイズ(<1um )の基地(マトリックス)組織に2-4um サイズの結晶粒が混合を有するバイモーダル組織を創成する最適な条件は,圧延後ミスト冷却・加熱温度900℃近傍・圧下率70%(相当ひずみ=1.39)以上が必要となると判断される(指導原理の定量化).この結果はS20Cを用いて平面ひずみ圧縮試験を行った時の結果と良く一致した.また,エリクセン・深絞り試験により圧延材の成形性を調査した結果,バイモーダル組織を持つことで均一伸びが高く,優れた成形性を示したと判断する.
|