研究課題/領域番号 |
13J06783
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木山 幸輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 人権 / グローバル正義論 / 世界的貧困 / 根本的価値 / 援助 / ポスト開発 / 規範理論と援助構想 / 人権と援助 |
研究概要 |
本研究は、世界的貧困への道徳的義務に関し、特に人権概念に焦点を当てつつ探究するものであるが、本年度は以下のような成果を得た。 第一に、人権の正当化・機能についての構想をめぐる先行研究の分析・検討が行われた。この成果はまず、修士論文の一部を改訂する形で投稿論文(8月投稿=約32000字)とされた。同論文は、人権を根本的価値に基礎づける自然法アプローチと、そのような基礎づけを避ける政治的アプローチの対比を導入しつつ、現在影響力の強い政治的アプローチの諸理論を詳細に分析・検討し、根本的価値への依拠が必要であること、および尊厳構想が重大な批判に応答しうることを示すものであり、『政治思想研究』の公募論文として公刊が決定した(なお、同論文の政治思想学会研究奨励賞受賞も決定した)。さらに秋・冬期に、根本的価値への依拠の必要性を、人権と干渉の関係の分析・政治的アプローチの最重要論者であるロールズの議論の詳細な分析を経ながら提示する報告原稿(2014年5月の政治思想学会にて報告予定)を執筆した。 第二に、人権を含むグローバルな正義の世界的貧困への規範的要請が、実際の援助構想とどのような関係を取り持つかについて研究を行った。まず、近年影響力をましつつある、地域主義を主張する種類のポスト開発思想の諸命題の分析を行い、その成果は同思想の規範的困難の明示・サーチャー型援助構想の擁護がなされる査読つき書評論文として『相関社会科学』に掲載された(9月投稿=約8500字)。次に、近年唱道される、リバタリアン・パターナリズムとランダム化対照試験(RCT)に依拠する援助政策構想を批判的に評価すべく、関連文献の渉猟・分析に努めた(秋季―冬季)。その結果明らかとなった同構想の困難についての分析・検討は、2014年内に査読付き雑誌に投稿される予定である。以上の研究は規範理論の見解と援助構想の接合を図る、邦語圏においてほぼ類を見ないものであると自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人権の機能・正当化および人権実現の政策評価に関する研究成果につき、邦語圏で影響力ある媒体での公表・公表確定(2つの査読付き雑誌掲載および報告機会の獲得)に成功し、順調に成果を積んでいる。特に、規範理論と援助構想の関係に関して論文執筆を行えたことは交付申請書以上の成果である。しかし、本年度は読み込み・分析・執筆に研究の多くを割いたため、文献収集に研究費の焦点を当てることとなり、在外研究に使用できなかったことが悔やまれる。
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今後の研究の推進方策 |
以上を踏まえ、引き続き交付申請書の予定通り研究を進めたい。平成26年度は以下のような計画を立てている。1.春季には人権の機能・正当化をめぐる学会報告を行う。2春季から夏季にはRCTやリバタリアン・パターナリズムに基づく援助構想の評価論文を執筆・投稿する。3秋季までに人権の正当化に関する英語論文を執筆し、海外研究者からの応答を頂くべく在外研究を行う。4冬季は未定である。5在外時以外は、年度を通じ、東京大学に在籍する分析哲学・スコラ哲学・憲法学・政治学・経済学・援助政策論・国際関係論の卓越した研究者の講義・演習を(引き続き)受講し、本研究の通奏低音となる知見を深めたい。
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