研究課題/領域番号 |
13J06787
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
細淵 倫子 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | アジア / 植民地都市 / 都市コミュニティ / カンポン / インドネシア / ジャカルタ / コミュニティ・リーダー / RT・RW |
研究概要 |
本研究の目的は、大都市ジャカルタのコミュニティを対象とし、農村と都市間の労働力の移動と都市コミュニティの内在的動態を研究することであり、21世紀植民地経験のある大都市における都市コミュニティの存在形態を把握し、類型化構築を行うことである。類型化構築のために、(1)大都市コミュニティの分析枠組みの提示、(2)コミュニティの物的・構造的歴史分析、(3)コミュニティ社会文化・経済的基礎分析、(4)地帯構成別コミュニティの実態分析、(5)大都市コミュニティ政策の課題検討を行う。さらに、大都市「コミュニティ論」の射程から、グローバル化が急速に進んでいる「アジア大都市」の構造的把握を目指すため、大都市ジャカルタの「カンポン」を対象とし、質問紙を用いた面接調査を実施する。 初年度である平成25年度は、「カンポン」やアジア植民地都市に関わる文献を精読し、大都市コミュニティの分析枠組みの構築に努め、コミュニティの物的・構造的歴史分析、コミュニティ社会文化・経済基礎分析、地帯的コミュニティの検討を行った。具体的には、第1に、インドネシア国内外のカンポンに関する既存研究を検討し、本研究の分析枠組みの構築をした。第2に、オランダ植民地時代にまで遡り歴史文書のサーベイを行い、カンポンの歴史的区分を設定することで、コミュニティの物的・構造的歴史を分析した。第3に、国内移動から生じる大都市ジャカルタの人口構成を検討し、ジャカルタを経由する人口移動の現状の把握を、人口統計データから分析した。第4に、地帯構成別コミュニティの実態分析のため、地域コミュニティの抱える問題把握と課題の把握の事前調査を行い、次年度に行う質問紙ならびに聞き取り調査の質問項目に反映させた。 これらの研究成果は、国内の学会誌への投稿論文1本(査読付き)と、学会報告2本として実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以上のように、本年度は、次年度の現地調査に向け、分析枠組みの構築のための文献サーベイ、質問紙作成を含めた事前調査、そして調査実施のための体制づくりを行った。また、本調査を通して、日本国内だけでなく、インドネシアの研究者の人脈、調査遂行の協力者などの人的ネットワークが拡大し、結果、次年度成果を報告するための多くの機会を得ることができた。これに時間をかけた分、現地調査の遂行に多少の遅れはでたが、これは交付期間を通じて挽回していくことが十分可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記に記した本年度の研究成果に基づき、次年度(2年目)は、現地調査の実施と、研究成果の報告を行う。 1年目のサーベイ結果に基づき、6つのカンポンでの現地調査を行う。調査内容は、カンポン住民の生活実態とその構造の把握と、カンポンを維持し、継続させてきたカンポン・リーダーやカンポン一般住民を対象に、質問紙調査とライフ・ヒストリーやエスノグラフィの記述を行う。なお、本調査に当たっては、現地研究者や現地住民とチームを組み、カウンターパートの先生のご指導の下、5人体制で調査を進めていく。 まず、質問紙調査では、全カンポン世帯主を対象に面接方式による質問紙調査をチームごとで行う。また、ライフ・ヒストリーやエスノグラフィの描写に関しては、カンポン・リーダー(各カンポン10名)とカンポン一般住民(30年以上、20~11年目、10~6年目、5~4年目、3年目未満の5グループを2人ずつ)を対象に、聞き取り調査と、参与観察調査を行う予定である。その結果を、随時、国内外での学会報告、論文執筆を行い、報告する。また、研究結果を地域に還元するために、カンポン住民によるカンポン活動に対しても積極的に協力し、その結果を話し合うワークショップを各カンポンで開催する予定である。
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