本研究は、大都市ジャカルタ・コミュニティの「都市カンポン」を対象とし、そのコミュニティ形成の歴史、および農村と都市間の労働移動を伴う都市コミュニティの内在的な動態と構造を実証的に研究することで、21世紀植民地経験のある大都市におけるコミュニティの存在形態を把握し、類型化構築を行うことを目的としている。 本年度は、上記課題の実証的研究のため、現地調査の実施とデータの分析及び成果報告を行った。まず、現地調査では、6つのカンポンを取り上げ、カンポンの地域リーダーを対象にインタビューや各活動における参与観察を実施、これと並行して6カンポン、合計624名の世帯主を対象とした聞き取り調査を行った。その結果、(1)ジャカルタにおける都市カンポンとは、農村から来た労働力を吸収し、アーバン・ビレッジとして成立していたが、現在は移住三~五世の存在が確認でき、ジャカルタにおいてもっとも多様な階層、エスニシティが混住する場所となっていること、(2)多様な階層、エスニシティの混住によって、都市カンポン・アイデンティティが高まっており、その混ざり具合により、地域特性に違いがみられること、(3)郊外地区におけるカンポンでは、市場性も高く、カンポンの自治力が高いことがわかった。これについては「東南アジア学会」(2014年6月)、「日本都市社会学会」(2014年9月)、アジア社会学研究会(2014年12月)でその一部を報告した。 また、これと並行して、2010年度以降の都市カンポンにおけるエスニックと自治の構造変容に関する研究を行った。これは、現地調査の結果を受け、都市カンポンにおけるアーバン・エスニックの新たな台頭を理解するための発展的な研究として行ったものである。ここでは、主にジャカルタ東部に位置するチョンデッにおけるフィールド調査(2014年7月~12月)を通じてデータを収集し、東南アジア関東例会(2015年1月)において発表を行った。
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