研究課題/領域番号 |
13J06806
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
弓野 沙織 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 緩和・適応策 / 都市温暖化 / 地球温暖化 / ヒートアイランド / CFD / 放射解析 / WRF / 地域特性 |
研究概要 |
1. 領域気象モデルWRFの精度検証 ・都市気候の解析に適したWRFサブモデルの組み合わせを検討するため、東北大学川内キャンパスを対象に、メソ・ミクロスケールの一貫気候解析を行い、実測結果と解析結果の比較を行った。 2. 放射解析への指向性反射の組み込み ・指向性反射が大きく影響する放射環境を解析するため、既存の放射解析プログラムへの指向性反射の影響の組み込みを行い単体建物を対象とした解析では妥当な結果を得た。 3. CFD解析と放射解析の連成解析手法の改良 ・日本工業大学敷地内の屋外都市模型COSMOにおける実測結果の分析を進め、測定期間中の大気安定度と安定度が流れ場に与える影響を分析し、特徴的な時刻を抽出した。 ・屋外都市模型COSMOと同形状の街区を対象に、RANSモデルを用いた非等温CFD解析を行った。浮力の影響の強い流れ場の解析実施のノウハウを得た。 ・LESについて、コレスキー分解に基づく手法の採用により、次年度に実施出来る見通しを得た。 4. 都市温暖化への緩和・適応、各々の観点から評価対象の優劣を決める評価基準の開発 ・地球温暖化の緩和、ヒートアイランドの緩和、都市温暖化への適応の異なる観点から、緑化や高反射といった環境配慮技術の優劣を評価するためのフレームを構築した。 ・暑熱環境下に発生する健康被害発生も災害と捉え、防災分野のリスク評価の手法を適用した新たな屋外温熱環境評価の方法を考案した。 5. 樹木の蒸効率の算定モデル開発のための実大樹木の蒸散量の長期測定 ・樹木数値モデルの蒸散に係る部分を改良するため、既に手代木らが行っている実大ケヤキの蒸散量の長期測定に加え、実験場の上空に風速計を設置した。上空の乱流統計量、気温といった気象条件と蒸散量の関係を分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・WRFの精度検証、指向性反射の放射解析への組み込みについては予定通り完了することが出来た。 ・評価対象の優劣を決める評価基準の検討については、目的が曖昧なまま実施されることが多い、いわゆる"都市温暖化対策"の目的を、①地球温暖化の緩和(省エネ効果で評価)、②ヒートアイランドの緩和(大気加熱量で評価)、③都市温暖化に対する適応(屋外生活空間の体感気候で評価)に明確に分類し、各々に適した評価法を構築し、さらに③に関して、猛暑による熱中症発症リスクの評価法も導入した点で計画以上の進展が得られた。 ・LESを用いたCFD解析と放射解析の連成解析手法の開発については、LESの温度変動も含む流入変動風の生成法がネックとなって、解析実施には至らず、やや遅れたが、コレスキー分解に基づく手法を採用することにより、次年度には実施出来る見通しを得た。 ・さらに、評価フレームの検討を進めるうえで、解析結果に大きく影響を及ぼす樹木の蒸発効率のモデル化の重要性を再認識し、このような折に、造園の専門家である都市緑化機構の手代木氏から所属研究室に共同研究の申し入れがあり、当初計画にはなかった実大ケヤキの蒸散量と周辺の気象条件の長期測定を行い、数値モデルの蒸散に係る部分の改良を新たに行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
・今後、①コレスキー分解に基づく流入変動風生成手法に基づき、WRFによる解析結果からLESの流入変動風を作成する手法を開発する。 ・次に②この手法を採用したLESを用いたCFD解析と放射解析の連成計算を行い、日本工業大学の実験サイトである屋外都市模型COSMOで修士時代に行った測定結果との比較を行い、数値解析の予測精度の検証と必要な改良を加える。 ・並行して、③実大ケヤキの蒸散量測定を継続し、この測定結果に基づく樹木の蒸散に関する数値モデルの改良を行い、街区スケールの温熱環境の高精度予測システムを構築する。 ・さらに、④空調負荷計算による人工排熱量評価を行い、都市の温熱環境の質(Quality)、気候変動への負荷(Load)を高精度で予測するシステムを開発。 ・最終的に、⑤上述の街区スケールの温熱環境、人工排熱量の予測システムを用いて地域特性の異なるいくつかの都市において解析・評価を行い、気候特性と都市構造の特性(人口、建蔽率、排熱密度等)に見合った環境効率の高い都市デザインの方策を提案する。
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