研究課題/領域番号 |
13J06852
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松林 英明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | SecYEG / MPIase / YidC / LepB / SecDF / 膜透過反応の蛍光測定 / 無細胞翻訳系 PURE system / Liposome |
研究実績の概要 |
SecYEGの機能に関与する脂質因子の同定について、岩手大学西山研究室との共同研究のもと大豆抽出物の脂質の分画に最適な条件を見出すことに成功し、大腸菌でSecYEGとの機能相関がみられている糖脂質(MPIase)と同様な脂質がTLC上で検出された。SecYEGと特定の脂質との相互作用について種を超えた保存性を検証するため、今後、因子の同定、構造決定、機能解析を進める予定である。 SecYEGの機能を制御する因子の候補として、3つの膜タンパク質(YidC, LepB, SecDF)を、大腸菌または無細胞翻訳系で発現精製するための条件検討を行った。3つのタンパク質についてPURE systemを用いた無細胞翻訳系で膜に組み込まれた形で調整できることが明らかになった。また、YidC、LepBについては、大腸菌から精製する方法も確立することができ、次年度に向けた因子の準備をある程度整えることができた。さらに、SecYEGによるタンパク質膜透過反応をリアルタイムに計測する方法として、蛍光ラベルした基質タンパク質を用いた実験系の構築を予定通り進展させることができた。これらの実験系を用いて、次年度の研究において、上記のタンパク質がSecYEGの膜透過活性に与える影響を解析する予定である。 また、上記YidC, LepBの無細胞合成系での研究結果などを元に、無細胞翻訳系を用いたSecYEGトランスロコンの合成と、それにより機能性の人工細胞膜を構築する手法について研究成果をまとめ、Angewandte Chemie International Edition誌に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大豆抽出物を脂質の性質に基づいて分画する方法を確立することができたが、得られた脂質を用いてliposomeを安定的に調整する最適な条件を見出すのが難しく進展が遅れている。 LepBについて、その活性ドメインを可溶性で精製することを試みたが、適切な条件を見いだすことが困難だったため、不溶性タンパク質として発現したものをリフォールディングする手法をとった。そのため、活性を持った状態のLepBを大腸菌から精製する方法を見出すのに予定以上の時間を要したが、現在は、安定的に精製する条件を見出されているため、次年度以降、機能解析に進む予定である。 一方で、YidC, LepBなどの膜タンパク質について無細胞翻訳系PURE systemで膜上での配向を制御して合成する手法を確立することができたため、これまでの研究成果と合わせて論文発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
SecYEGの機能に関与する脂質因子の同定について、大豆抽出物の脂質を探索したところ、大腸菌でSecYEGとの機能相関がみられている糖脂質(MPIase)と同様な脂質が見出された。今後は、MPIaseを同定された岩手大学西山教授との共同研究を行い、因子の同定、構造決定、機能解析を進める予定である。課題となっているliposome調整法については、今まで用いたFilm-Hydration法に限らず、界面活性剤を持ちいる方法など多様な手法を取り入れて検討する予定である。 SecYEGの機能解析については、これまでに確立した膜透過反応の蛍光測定法を用いてリアルタイム観察を行う。その際、これまでに精製したタンパク質(YidC, LepB, SecDF)を組み合わせて再構成することで、それぞれの因子が膜透過反応に与える影響を解析する。特に、膜透過反応のターンオーバーを担っっている因子の特定を目指す。
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備考 |
上記のプレスリリースは、日刊工業新聞やマイナビニュースなどでも取り上げらています(日刊工業新聞、2014年6月23日、「細胞膜たんぱく質分子構築 東工大など試験管内で成功 人工細胞に道」)。
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