研究課題/領域番号 |
13J06875
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
椎根 里菜 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | アンリ・プーラ / フランス地方語 / 批評校訂版 / 語彙研究 / 草稿研究 / ジャン・ロラーニュ |
研究概要 |
研究の目的は、20世紀のフランス、オーヴェルニュ地方作家である、アンリ・プーラの初作品『丸い丘の上で』の諸版と草稿を比較検討し、異同を明らかにした校訂版の作成、ならびに作中で使用される地方語の語彙研究を行い、語彙集を作成することである。本研究は、申請者が2011年に学習院大学大学院に提出した修士論文(Étude sur Henri Pourrat : Examen de ses régionalismes à travers sa correspondancce avec Lucien Gachon et les différentes versions de 《Sur la Colline ronde》)の研究結果を引き継ぎ、発展させているものである。修士論文では部分的にしか研究できなかった異同の比較と語彙研究を、小説全体を網羅的に研究し、同作品初の批評校訂版の作成を目指している。 初年度は批評校訂版と語彙集の作成の為、基本的な文献学的手法と語彙研究の方法論の習得に焦点をあてて研究を進めた。文献学的手法に関しては、パリ第7大学にて、アンリ・プーラ研究の先駆者でもあるベルナデット・ブリクー教授のセミナーに参加し、実践的な方法を学んだ。また、語彙研究の手法を取得する為、パリ第4大学のアンドレ・チボー教授のセミナーに参加し、フランス本土のフランス語だけではなく、カナダ、アンティーユ諸島、ルイジアナやアフリカなどのフランス地方語についても知識を深め、実際に地方語辞書をどのように作成するのかを学ぶことが出来た。これらは網羅的な批評校訂版ならびに語彙集の作成のために多いに役立つ経験であった。 また、『丸い丘の上で』をジャン・ロラーニュとアンリ・プーラが当初どのように分担執筆を行ったかを、クレルモン=フェランのアンリ・プーラセンターにて草稿下書きを閲覧することで明らかにすることができた。1914年にジャン・ロラーニュは死去したため、その後の書き換えはアンリ・プーラによるものであるが、当初の両氏の担当箇所に関しては研究されていなかった。これまで明らかにしたことを論文にまとめ、研究発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者の研究対象である『丸い丘の上で』は、本来アンリ・プーラとジャン・ロラーニュ(第二版以降死去)の共同執筆であったが、今まで二人の担当箇所についてはわかっていなかった。しかし、クレルモン=フェランにあるアンリ・プーラセンターで、草稿下書きを閲覧した結果、二人の執筆担当を明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
一年目の作業を継続しつつ、学習した批評校訂版の作成法を自身の研究作業に応用・還元する。また、語彙研究に関しては、異同に含まれる全ての地方語や貴重な表現等を敢り出して、『フランス地方語辞典』や『フランス語語源辞典』を用いて研究を続ける。アンリ・プーラはオーヴェルニュ地方作家ということもあり、同地方の方言由来のものも使用している可能性があるため、語源不明のものや、上記の大型辞書で分からない語彙に関しては、方言辞典やさらに特定の地域の地方語辞書(学問的でないものも含む)も閲覧し、明らかにしていきたい。また、一年目で明らかにした点を論文でまとめ、発表していく所存である。
|