ビスホスホネートの細胞内取り込み機序として、昨年度、細胞膜輸送機構のひとつであるリン酸トランスポーターが関与する可能性を示した。具体的には、ビスホスホネートのもつ細胞・組織への以下の作用に対するリン酸トランスポーター阻害剤Phosphonoformic acid (PFA)の効果を検討した。その結果、①マウス耳介での壊死発症、②マウス耳介を用いた放射線同位元素標識ビスホスホネートの細胞内取り込み、③マウスBronjモデルにおける顎骨壊死発症のいずれにおいても、PFAは抑制効果を持つことを明らかにした。 しかし、どの細胞が標的なのか、複数のリン酸トランスポーターのうち、どのリン酸トランスポーターが関与するのかは未だ不明であった。そこで、本年度は、①標的細胞の同定及び、②リン酸トランスポーターのアイソフォーム同定を目的として実験を行った。 その結果として、in vitroおよび in vivo の複数の実験において、標的細胞として、血管内皮細胞が標的細胞として大きな役割を果たすことが示された。 次に、リン酸トランスポーターのアイソフォーム同定に取り組んだ。現在、口腔内の組織及び細胞に発現する既知のリン酸トランスポーターとして、SLC20a1、SLC20a2、 SLC34a1、SLC34a2、SLC34a3の5種類が明らかになっている。このうち、SLC34a1コンディショナノックアウト(CKO)マウスを用いて、Bronj顎骨壊死モデルへの影響を検討したところ、SLC34a1 CKOマウスにおいて有意に顎骨壊死発症頻度が減少した。 以上の結果より、ビスホスホネートはSLC34a1を介して血管内皮細胞内に取り込まれ、アポトーシスをひきおこし、結果、Bronjをもたらすこと、さらに、PFAはこの取り込みを阻害し、Bronj発症を抑制する可能性が示唆された。
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