研究課題/領域番号 |
13J06906
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
和気 尚美 筑波大学, 大学院図書館情報メディア研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 公共図書館 / エスニック・マイノリティ / 移民 / デンマーク |
研究概要 |
研究課題「デンマークにおけるムスリム移民の公共図書館利用に関する研究」について検討する視点を、移民への図書館サービスを利用する「利用者側」の視点と、提供する「提供者側」の視点に分け、平成25年度前半では「利用者側」の利用状況を、年度後半では「提供者側」の提供体制を明らかにすることを目指した。 年度前半の現地調査は平成25年6月1日から8月31日までの2カ月間に実施した。滞在中はコペンハーゲン大学情報学アカデミーを研究活動の拠点とした。首都コペンハーゲン市の中の移民が多く生活するナアアブロ地区に立地するナアアブロ図書館を訪問し、図書館を利用するムスリム移民に対してインタビュー調査を行った。インタビューでは、図書館を利用するムスリム移民とは一体誰で、図書館で何をしているのか、また、図書館という場をどのように認識しているのか、という点について尋ねた。その他、同図書館で提供されている移民を主な対象とする図書館プログラムに参加し、参与観察を行った。参加者と同様にプログラムに参与し、参加者の構成や座席位置、参加中のふるまい、参加者間の交流をフィールドノーツに記録した。 年度後半の現地調査は平成26年2月20日~3月14日までの間に実施した。この調査では、デンマークにおける移民に対する図書館サービスがいかなる組織体制のもと提供されているのかを明らかにするために、計10名の文化行政担当職員や図書館員とインタビューを行った。ナショナル・レベルでの移民への図書館サービスを支える体制を明らかにするために、文化省文化局の図書館行政担者や、国立統合図書館センターの職員から話を聞いた。また、自治体レベルでの移民への図書館サービスを支える体制については、コペンハーゲン市を事例として取り上げ、コペンハーゲン市立図書館の図書館員や、コペンハーゲン市役所の文化・レジャー部の職員から情報を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題「デンマークにおけるムスリム移民の公共図書館利用に関する研究」に関して、年度の前半と後半で研究視点を分け、個別に設定された研究課題を現地調査によって明らかにできたという点で、今年度の研究目標を達成している。研究成果のアウトプットが遅れているが、現在学術雑誌への投稿論文としてまとめている。また平成26年春季に開催される学会にて発表することも決定している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の調査を通じて、デンマークの図書館界では、図書館員組合(Bibliotekarforbundet)が重要な役割を担っており、組合内に移民に対する図書館サービスを扱うワーキング・グループが存在していることが明らかになっている。そのため、平成26年度に再度現地調査を行い、図書館員組合から見る視点で研究課題「デンマークにおけるムスリム移民の公共図書館利用に関する研究」に取り組んでいく予定である。
|