今年度前半は、昨年度末に調査したデンマークにおける移民に対する公共図書館サービスの提供体制について研究成果をまとめることに従事した。計10名の文化行政担当職員や図書館員と行ったインタビューのデータを分析し、予算の提供、多言語資料・専門的助言の提供、ネットワーク形成支援の3 点から考察した。なお研究成果は平成26年5月24日に開催された2014年度日本図書館情報学会春季研究集会において「デンマークにおける移民を対象とした図書館サービスを支える体制」という題目で報告を行っている。 今年度後半にはデンマークおよびノルウェーにて現地調査を行った。調査の目的は、1)デンマークの移民に対する図書館サービスにおける図書館とNGOの協力関係を明らかにすること、2)これまで継続的に調査してきたコペンハーゲン図書館ナアアブロー図書館(Noerrebro Bibliotek)にて利用者に追加調査を行うこと、3)移民の図書館利用について研究するオスロ大学の人類学者にインタビューを行うこと、の3点とした。コペンハーゲン市内では公共図書館とNGOの協力体制を知るために、公共図書館にボランティアを派遣しているNGO 2団体と、NGOから派遣されるボランティアを受け入れている公共図書館1館を対象にインタビューを実施した。また、ナアアブロー図書館では移民の背景を持つ利用者に図書館利用について尋ねるインタビューを行った。ノルウェーのオスロでは、本研究と類似した研究対象に社会人類学という分野からアプローチしているオスロ大学の人類学者にインタビューを取った。これにより、移民の公共図書館利用に関する分野横断的な共同研究の可能性を確認することができた。
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