研究課題
申請者は理化学研究所より供与を受けた天然化合物ライブラリー(Authentic chemical compound libraryおよびPilot chemical compound library)を用いて、NALP3 インフラマソームの新規制御分子の探索を試みた。既に作用機序が明らかになっている典型的な天然化合物を網羅したAuthentic chemical compound libraryを用いたスクリーニングの結果、申請者はNALP3インフラマソームの活性化が微小管によって制御されているという新規メカニズムを発見した。具体的には、ミトコンドリアの傷害に伴う細胞内NAD^+量の低下がNAD^+依存性脱アセチル化酵素SIRT2を不活化し、微小管の構成因子であるαチューブリンのアセチル化が促進され、ミトコンドリア上のASCと小胞体上のNALP3の接近頻度が向上し、その後のNALP3インフラマソームの形成および活性化が促進されていた。これらの解析結果は、微小管およびその修飾因子がNALP3インフラマソームの過度な活性化によって発症する種々の炎症性疾患に対して有力な創薬標的分子になり得ることを示唆するものであり、意義がある。この他にも、申請者はフィトケミカルとして広く認知されているレスベラトロールが微小管のアセチル化、並びにその後のNALP3インフラマソームの活性化を抑制することも明らかにした。機能未知の天然化合物を多く含むPilot chemical compound libraryを用いて、Authentic chemical compound libraryと同様のスクリーニングを行った結果、申請者はNALP3 インフラマソームの活性化をほぼ完全に抑制する化合物(化合物F)を発見した。NALP3 インフラマソーム活性化機構において、化合物Fが作用するステップを検証した結果、化合物Fはミトコンドリアの傷害を強力に抑制することが明らかとなった。また、化合物Fはin vivoにおいても強い抗炎症効果を示した。今後は、化合物Fが作用するタンパク質をカラムクロマトグラフィー法および質量分析器を用いて同定する。
1: 当初の計画以上に進展している
Authentic chemical compound libraryを用いたスクリーニングの結果、申請者は微小管によるNALP3 インフラマソーム活性化制御機構を明らかにした。上記解析結果はNature Immunology誌に掲載された。加えて、Pilot chemical compound libraryを用いたスクリーニングの結果、申請者はNALP3 インフラマソームの活性化を強力に抑制する化合物Fを発見した。更に申請者はNALP3インフラマソーム活性化機構における化合物Fの作用ステップやinvivoにおける抗炎症効果についても確認している。化合物Fはコルヒチンの様な従来のNALP3 インフラマソーム活性化阻害剤に比べて細胞毒性も低く、その阻害効果も極めて強い。したがって、化合物FはNALP3インフラマソームの過度の活性化に起因する種々の炎症性疾患に対する有効な薬剤となりえる可能性がある。以上のことから、申請者の研究は、日本学術振興会からの研究助成を受けたことで当初の計画以上に進展したと言える。
申請者は、カラムクロマトグラフィー法および質量分析器を用いて化合物Fが作用するタンパク質の同定を行う。なお、化合物を充填させたカラムは理化学研究所に供与を依頼し、その後の実験および解析はすべて申請者が行う。上記解析により化合物Fに結合する分子が同定された際には、マウスマクロファージセルラインであるJ774において、RNA interference法によりその分子の発現を抑制した細胞株を樹立する。続いて、同細胞株を尿酸結晶で刺激後、産生される1L-1βの量をELISAにより測定することで、同定された分子のNALP3 インフラマソーム活性化における重要性を評価する。更に、化合物Fがその分子に対してどのような作用を示すかについても解析する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/2013/03/20130318-natimmunol.php