研究課題/領域番号 |
13J06969
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
長谷川 輝 鳥取大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | オーガナイザー / 原条 / エピブラスト / EpiS細胞 |
研究概要 |
マウス初期胚に出現するエピブラストは、胚葉の直接の起源であるが、エピブラストの維持・分化制御機構にあたる分子基盤は、あまり解明されていない。私は、マウスES細胞を初期胚モデルとして使用し、エピブラストの分子基盤に関係する可能性がある遺伝子としてLhx1(LIM homeobox1)を同定した。 私は、エピブラストの特徴を持つエピブラスト幹(EpiS)細胞にLhx1発現ベクターを導入し、過剰発現実験を行った。結果は、オーガナイザー、中胚葉、内胚葉マーカー遺伝子の発現が有意に上昇していることが確認された。次に、mES細胞において、Lhx1をノックダウン(KD)し、Lhxl-KDmES細胞株を樹立した。この細胞株でエピブラストが形成される時期の遺伝子発現を確認した。その結果、オーガナイザー、中胚葉、内胚葉マーカー遺伝子の発現が有意に抑制されていることが分かった。これらの結果から、Lhx1は、中胚葉、内胚葉の誘導に関与していることが分かった。また、EpiS細胞において、Lhx1存在下では、オーガナイザー遺伝子のCer1, Gscと中胚葉、内胚葉の起源である原条マーカー遺伝子のBrachyuryのプロモーター活性が確認された。そして、Lhx1の発現をGFPで可視化できる、Lhx1ノックインES細胞株を樹立した。この細胞株で凝集塊を作製すると、3日目付近で一部に発現が見られ、その後、全体に発現が確認された。凝集塊3.5日目と5日目でセルソーティングを行い陽性細胞群と陰性細胞群で遺伝子発現を確認した。その結果、3.5日目では、陽性細胞群でのみオーガナイザーマーカーの発現が確認された。5日目では、陽性細胞群で中胚葉、内胚葉マーカーの発現が確認された。 これまでの結果から、Lhx1は①エピブラストからオーガナイザーを生成する。②原条を形成する。③中胚葉、内胚葉を誘導する。これら3つの機能が分かった。Lhx1は、オーガナイザーの生成と中胚葉、内胚葉の誘導に重要な役割を担っている可能性が示唆され、Lhx1を中心とした遺伝子ネットワークを解明することによって、新規のエピブラストに関係する分子基盤を提唱できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
優先事項であったLhx1ノックインES細胞株の樹立は行った。しかし、コンディショナル発現系細胞株の樹立やLhx1の転写制御に関係するシスエレメントの同定は、現在進行中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Lhx1ノックインES細胞株を主に使用する。まず、セルソーティングによって陽性細胞と陰性細胞を選別し、それぞれの特性を解析していく。また、Lhx1が直接制御する遺伝子等をルシフェラーゼアッセイやChip-assayを用いて探索する。これらによって、Lhx1を中心とした遺伝子ネットワークの解明を行う。mES細胞の凝集塊で、Lhxlに局在が確認されたことから、マルチフォトン顕微鏡を用いて、凝集塊の鮮明な内部画像を取得する。これによって、mES細胞の軸の存在を提唱できると考えている。
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