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2014 年度 実績報告書

ゼオライトサブナノ空間を特異反応場として利用した亜鉛原子および一価亜鉛イオン創製

研究課題

研究課題/領域番号 13J06974
研究機関岡山大学

研究代表者

織田 晃  岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード亜鉛イオン交換MFI / コバルトイオン交換MFI / Al配列場
研究実績の概要

以前、我々は、MFI型ゼオライト(Si/Al=11.9)中に存在する二価カチオン交換サイト上にイオン交換されたZn2+上では水素やメタンの不均一結合開裂反応が室温または室温近傍で起ること、Zn2+に金属亜鉛ガスと接触させることにより安定なZn22+に転換させることができること、およびZn22+の磁性を光と熱で制御可能であることを発見した。即ち、特異MFI場を利用することで亜鉛イオンに新しい物性を賦与することができることを見いだした。しかし、亜鉛イオンの状態を制御するMFI場の性質を明らかにすることはできていなかった。そこで、私は、Zn2+の活性と二価カチオン交換サイトのAl配列との関連性をDFT計算で検討した。様々なAl配列場上にイオン交換されたZn2+の状態を計算で再現し、Zn2+の活性のAl配列依存性を評価した結果、二価カチオン交換サイトのAl-Al距離と曲率によってZn2+の活性が制御されることがわかった。即ち、Zn2+の活性はAl配列によって制御されることが示された。
特異MFI場を利用すれば亜鉛イオンの状態を制御することが可能であることが明確に示されたため、最近、他の金属イオンの状態制御も可能であるかどうかを検討している。その過程で、二価コバルトイオン交換MFI中の[Co-O-Co]2+を2 Co+にCO還元できること、それらの上ではO2が室温で開裂し2 [Co-O]+が形成すること、形成した2 [Co-O]+上ではCOの酸化反応が室温で起ることを見いだした。即ち、特異MFI場を利用すればCO酸化触媒反応に対して活性なCo+種を創製可能であることが実験で示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

亜鉛イオン交換MFI中で起る、新奇な現象(室温近傍における水素、メタン、エタン、プロパンの活性化および一価亜鉛イオン転換反応)の起源を計算で明らかにすることに成功した。即ち、亜鉛イオンの物性は二価カチオン交換サイトのAl-Al距離とCurvatureによって制御されることを明らかにした。Al配列とイオン交換金属の活性との間に密接な関係があることは認識されていたけれども、本研究のように明白に金属イオンの活性に影響を及ぼす因子を特定することに成功した例はなく、本研究成果は、新物質デザインのためにも極めて重要であり、その学術的な位置づけは極めて高く、意義深い。加えて、MFI場を利用すれば形成例が少ないCo+を安定にMFI中に創製し、触媒として利用可能であることも見いだしており、これらは無機化学や触媒化学の発展に貢献する成果であると認識する。以上のことを踏まえ、今年度の研究進歩状況について「当初の計画以上に進展している」と、評価した。

今後の研究の推進方策

近年、ゼオライトのAl配列はゼオライト合成条件に依存することがDedecekやPinarらの研究グループにより示されている。現在、彼らの研究を参考にし、Al配列が異なるゼオライトを合成し、二価カチオン交換サイトの性質を制御可能であるか、そしてそれらを利用してZn2+の活性を制御可能であるかを実験で検討している。また、Zn2+の活性を引き出すAl配列を実験で特定することを目指し、Zn2+やZn22+をプローブにしたX線粉末構造解析を実施する(7月に予定)。
ゼオライトの種類やSi/Al、コバルトイオン導入法等を変えることにより、活性Co+種の状態や量を制御できるかどうかを検討している。加えて、X線吸収微細構造スペクトル測定をPFで行い、活性点の電子状態や構造に関する知見を収集する予定である(6月に予定)。これらの実験結果を基に、DFT計算で、活性点のモデル化および触媒反応サイクルの再現を行い、触媒反応の機構やMFI場の役割に関する知見を得る。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] An Important Factor in CH4 Activation by Zn Ion in Comparison with Mg Ion in MFI:The Superior Electron-Accepting Nature of Zn2+2014

    • 著者名/発表者名
      A. Oda, H. Torigoe, A. Itadani, T. Ohkubo, T. Yumura, H. Kobayashi, and Y. Kuroda
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. C

      巻: 118 ページ: 15234~15241

    • DOI

      10.1021/jp5013413

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Combined Experimental and Computational Approaches To Elucidate the Structures of Silver Clusters inside the ZSM-5 Cavity2014

    • 著者名/発表者名
      T. Yumura, A. Oda, H. Torigoe, A. Itadani, Y. Kuroda, T. Wakasugi, and H. Kobayashi
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. C

      巻: 118 ページ: 23874~23887

    • DOI

      10.1021/jp508150w

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 室温付近で水素・メタン活性化能を示す特異な亜鉛イオンの創製場としてのMFI型ゼオライト2014

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 鳥越裕恵, 黒田泰重
    • 雑誌名

      ゼオライト

      巻: 31 ページ: 88~96

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] MFI場を利用した安定なM22+(M = ZnまたはCd)の創製-M22+形成機構の解明を目指した実験と計算からのアプローチ-2015

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 湯村 尚史, 小林 久芳, 黒田 泰重
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部船橋キャンパス
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] ZnMFI上で効率よく起るエタンの脱水素化反応とMFI場の効果2015

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 湯村 尚史, 小林 久芳, 黒田 泰重
    • 学会等名
      第115回触媒討論会
    • 発表場所
      成蹊大学
    • 年月日
      2015-03-23 – 2015-03-24
  • [学会発表] Zn2+の水素・メタン活性化能を引き出すMFI場2014

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 黒田 泰重
    • 学会等名
      第30回ゼオライト研究発表会
    • 発表場所
      タワーホール船堀
    • 年月日
      2014-11-26 – 2014-11-27
  • [学会発表] 二量体Zn+種, Zn22+, に変換可能なMFI中のZn2+種の解明-H2をプローブ分子として利用したIRおよびDFT計算-2014

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 黒田 泰重
    • 学会等名
      第28 回日本吸着学会研究発表会
    • 発表場所
      北海道大学フロンティア応用科学研究棟
    • 年月日
      2014-10-23 – 2014-10-24
  • [学会発表] 固相イオン交換法によって調製したZn+MFI上で起るメタン部分酸化反応2014

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 湯村 尚史, 小林 久芳, 黒田 泰重
    • 学会等名
      第114回触媒討論会
    • 発表場所
      広島大学 東広島キャンパス
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] Control and manipulation of both H2 and CH4 activation ability of Zn2+ in MFI:models studies on Zn2+-MFI interaction2014

    • 著者名/発表者名
      A. Oda, T. Ohkubo, T. Yumura, H. Kobayashi, and Y. Kuroda
    • 学会等名
      6th International FEZA Conference
    • 発表場所
      Leipzig, Germany
    • 年月日
      2014-09-08 – 2014-09-11
  • [学会発表] MFI反応場を利用したZn22+の創製および光と熱によるその状態制御2014

    • 著者名/発表者名
      織田 晃, 大久保 貴広, 湯村 尚史, 小林 久芳, 黒田 泰重
    • 学会等名
      第65回コロイドおよび界面化学討論会
    • 発表場所
      東京理科大学神楽坂校舎
    • 年月日
      2014-09-03 – 2014-09-05

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公開日: 2016-06-01  

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