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2013 年度 実績報告書

シュルレアリスムの芸術創造における科学的思考―ハンス・ベルメール作品を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 13J06993
研究機関大阪大学

研究代表者

松岡 佳世  大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードハンス・ベルメール / シュルレアリスム / 科学的言説 / 人形 / 身体 / マックス・エルンスト / マルセル・デュシャン / ジョルジュ・バタイユ
研究概要

本年度は一次資料の収集を目的とした渡仏調査により、自然科学の言説の各シュルレアリストたちによる受容を探ることで、ハンス・ベルメールの制作に関わる他作家との比較のための素地をつくっていった。ベルメールとマルセル・デェシャンの比較研究については、フランス国立図書館での調査により、デュシャンの四次元幾何学とエロティスム研究に関する新たな知見を得た。これをもとにベルメールがデュシャンの作品に言及するテクストを精読し、関連するベルメールの造形作品の選別と各作品の分析を進めた。マックス・エルンストについては、その戦時期のキメラ的イメージに、収容所で同室であったベルメールがどのように反応したか、という点を中心に比較分析を行った。これは従来のベルメール研究では殆ど等閑視されてきたが、プリニウス『博物誌』をもとに生成されたエルンストの独自の自然に対するアプローチはベルメールのそれを考える上で非常に重要な点を占めている。そこで、2人が収容されたアクサンプロヴァンスのミル収容所に赴き、両者の収容時書類等の資料を得、加えて造形作品にも見出される収容所のイメージを多数確認した。また、解放後にも見られる共通する技法やイメージをカンディンスキー図書館において確認した。以上のような各作家との関係調査と平行して、日本ではアクセスの困難なベルメール自身の制作および生活状況、交友関係を補完する資料の網羅的収集を行った。ベルメールの友人であった精神科医ジャン・フランソワ・ラバン氏にはインタビューを行い、晩年の作家の制作・生活状況についての情報を得、書簡約20通の調査を進めている。また、ベルメールの遺族と友人パトリック・ワルドベルク氏の遺族の便宜を得て、ジャック・ドゥーセ文学図書館でのベルメールとブルトンらの往復書簡約90通の閲覧調査を進めている。カンディンスキー図書館ではマン・レイ・ファウンデーション所蔵のベルメールからマン・レイへ宛てた書簡を閲覧し、晩年のベルメールの交友関係に関する情報を補強することができた。またブルトンのマン・レイ宛書簡により、ベルメールの出展したシュルレアリスム国際展(1947年展及び1959-60年展)の展示意図と各作家の展示裁量などが把握されたことは大きな進展であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

渡仏調査によってデュシャン、エルンストにおける自然科学の言説受容についての一次資料と文献調査、及びベルメール作品に関連する一次資料と関係者の聞き取り調査は在仏の研究者による助けもあり、当初の計画以上に進展した。この進展によってある程度残りの調査の目処をたてることができたので、相対的に進みの遅いバタイユにっいての研究調査も、在仏中に一層進展させることができると考える。

今後の研究の推進方策

調査の経過において、ベルメールを取り巻く作家たちの自然科学的言説やその歴史へのアプローチから抽出されるのは、自然科学の研究対象である「もの objet」の変容、あるいはそうした「もの」のもつ役割の変化、そしてそれに伴ってアーティスト自身に起る変化という主題であることが明らかになりつつある。2014年度はこの点に着目して、計画していたバタイユ作品のベルメールへの受容について考察を加え、帰国後は引き続き得た資料の精読及び綿密な比較分析を実施し、渡仏調査の研究成果を美学会および学会誌にて発表していくことに尽力する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] マルセル・デュシャンの《ロト・レリーフ》(1935)―非ユークリッド空間における視覚の問題を中心に2013

    • 著者名/発表者名
      松岡 佳世
    • 学会等名
      待兼山芸術学会
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2013-05-28

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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