研究実績の概要 |
本研究ではX線結晶構造解析によってTax-NEMO複合体の立体構造を決定し, TaxがNEMOと結合してNF-κB経路を活性化するメカニズムを解明することを目的とした. 本年度は、前年度に見出したコンストラクトのTax、NEMOについて、結晶化のための発現精製をおこなった。マルトース結合タンパク質(MBP)はしばしば、構造的にフレキシブルなタンパク質を安定化させることが報告されていたため、申請者はTaxを大腸菌発現系を用いて、発現・精製を試みた。しかしながら、Taxの天然変性タンパク質に特徴的な不安定性のために精製することはできなかった。Taxの構造決定には、さらなるコンストラクトの改良が望まれる。 さらに本年度ではウイルス感染の際に免疫応答に関わるタンパク質、cGASタンパク質のバクテリアホモログであるDncVの構造解析に取り組んでいる。cGASタンパク質は、ウイルス由来のDNAを認識してcGAMPと呼ばれるヌクレオチドを産生する。DncVはDNA非存在下においてでもcGAMPを産生するが、そのcGAMPは、cGASによって産生されるcGAMPとは異性体にあたることが知られていた。本研究で決定したDncVの構造から、DncVによるcGAMP産生の触媒機構の詳細なメカニズムを明らかにした。さらに、および、cGASとの構造比較から、哺乳類とバクテリアで異なるcGAMP産生を達成する構造基盤の解明に成功した。本研究成果は、Structure誌にすでに受理されており, 掲載される予定である。
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