研究課題
人間の腸には常に100兆個以上の腸内細菌が生息しており、免疫のバランスを制御し、健康を維持するために重要であると考えられています。クロストリジウム属細菌は腸管において誘導性制御性T(iTreg)細胞を誘導することが近年の研究により明らかとなっています。しかしクロストリジウム属細菌がどのようなメカニズムでiTreg細胞を誘導するのか明らかではありませんでした。トランスフォーミング増殖因子 (TGF-β)はこの iTreg誘導に必須のサイトカインであり、我々はクロストリジウム属細菌とTGF-βに着目して研究を行いました。整腸作用のあるクロストリジウム属細菌Clostridium butyricum (C. butyricum)は 腸管においてTGF-β依存性にiTregを増加させました。詳細な解析からC. butyricumは腸管樹状細胞上のToll like Receptor 2 (TLR2) からERK-AP1経路を活性化し初期のTGF-βの分泌を促すことが分かりました。続いてTGF-βの自己分泌作用(オートインダクション)によってTGF-βの産生が加速されること、オートインダクションにはSmad3が促進的な働きをするのに対して、Smad2は抑制に働くことを明らかにしました。Smad2欠損樹状細胞はTGF-βの発現が向上し、iTregをより強力に誘導して腸炎モデルを抑制しました。本研究によってC. butyricumによるTLR2-AP-1及びTGF-β-Smadシグナルを介したTGF-βの発現機構が明らかとなった結果、炎症性腸疾患に対する安全で効果的な予防法や治療法の開発が期待されます。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Immunity
巻: 43 ページ: 65-79
10.1016