今年度は、骨折修復におけるTGFbの機能解析と活性化メカニズムの解析を行い、得られた研究成果をまとめ国際誌に投稿した。 1. TGFbシグナルの機能解析 TGFbは哺乳動物において3つのアイソフォームが報告され、それぞれが特異的な働きを持っていると考えられている。骨折修復においては、遺伝子発現解析によりtgfb-2とtgfb-3が重要であることが示唆されているが、その発現細胞や機能はわかっていない。メダカ骨折修復モデルにおいて、すべてのTGFbアイソフォームの発現をRNA in situ hybridizationによって解析したところ、骨形成領域でtgfb-2のみが発現することが明らかになった。薬剤によりTGFbシグナルの阻害実験から、TGFb-2は骨芽細胞の移動と分化、破骨細胞の分化に関与することが示唆された。 2. TGFb活性化メカニズムの解析 潜在型TGFbの活性化には、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などのタンパク質分解酵素などが関与することが知られている。MMPのうちTGFb活性化に寄与すると知られているものについて、メダカ骨折修復モデルにおけるRNA in situ hybridizationによる遺伝子発現解析を行った。その結果、mmp-2とmt1-mmpがTGFbシグナル非依存的に骨形成領域で発現することが明らかになった。膜型MMPであるmt1-mmpは組織内在性MMP阻害因子2(TIMP-2)を介して、分泌型のMMP-2を活性化することが報告されている。骨形成領域においてtimp-2aおよびtimp-2bもまた高発現することから、MT1-MMPがTIMP-2と共同して位置特異的なmmp-2活性化に伴う局所的TGFb-2活性化を引き起こすことが示唆された。
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