研究課題/領域番号 |
13J07077
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中安 淳 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ハミルトン・ヤコビ方程式 / クリスタライン曲率流 / 等高面法 / 粘性解 / 最適制御理論 / 特異拡散方程式 |
研究概要 |
平成25年度は非線形方程式論特に粘性解理論と変分学および距離空間上の方程式について研究し、距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式、クリスタライン曲率流において新たな成果を挙げた。以下ではそれぞれの研究課題の内容と意義について記述する。 1. 距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式。凸なハミルトニアンを持つ一般の距離空間上の時間発展型ハミルトン・ヤコビ方程式の初期値問題に対してラグランジュ力学に基づいた粘性解の定式化を行い、解が一意存在することを示した。近年、連続体力学への応用で無限次元空間、前線伝播などへの応用から分岐のある空間上のハミルトン・ヤコビ方程式の研究が行われているが本研究はそれらの空間を包含する距離空間を扱っており、線分と平面のように異なる次元をもつ集合が張り合わせてできた空間についても対象としているためそのような応用も期待される。また、本研究は測地線の存在を仮定しないで議論を進めている点でも新しい。 2. クリスタライン曲率流。結晶成長学において界面の運動を記述するクリスタライン曲率流の等高面法について研究した。応用上、空間非一様な駆動力付きの場合が重要であるが、対応する等高面方程式は二次元空間のときでさえ未解決問題が多い。本研究では二次元結晶成長で結晶線が関数のグラフで表される場合の1次元方程式に対して粘性解の存在性を示した。この方程式は拡散係数にデルタ関数が現れて非局所的な量になっているいわゆる強特異拡散型でさらに非線形、非発散型という従来の偏微分方程式論の対象から大きく外れるものである。本研究の成果である粘性解の存在性定理はそのような1次元非局所的強特異拡散型方程式で完全非線形であっても適用可能な一般性の高いものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では本年度は距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式について研究を行い、成果を論文にまとめる予定だったものの成果の公表には至らなかった。しかしながらクリスタライン曲率流に関して部分的な成果を挙げ順調に進展していることから、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き資料収集を進めつつ以下の研究課題について研究を進める。距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式に関しては論文を投稿状態にする。クリスタライン曲率流は二次元や高次元の場合の等高面方程式の粘性解の定式化および解の一意存在安定性を調べる。また、本年度の研究過程で非ユークリッド空間の一種であるハイゼンベルグ群上の非線形方程式について多くの未解決問題があることを知ったため、それらの問題にも取り組む。
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