研究課題/領域番号 |
13J07086
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
傳田 将也 徳島大学, 薬科学教育部, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ケミカルバイオロジー / タンパク質ラベル化 / N-Sアシル基転移反応 / ペプチド化学 |
研究概要 |
本研究では、プロテオーム中での機能未知タンパク質(標的タンパク質)選択的ラベル化を可能とするラベル化試薬SEAlide-based labeling tag (SEAL-tag)の開発を目的としている。今年度はモデル標的タンパク質としてcyclooxygenase 1 (COX-1)を選択し、ラベル化条件の検討およびSEAL-tagによりラベル化されるCOX-1中のアミノ酸残基の同定を行った。しかしCOX-1がラベル化条件下不安定であることや分子量が約70kDaと巨大であることにより、ラベル化部位同定が非常に煩雑になることが問題として浮上した。このためモデル標的タンパク質をより安定かつ分子量が約28kDaと小さいhuman carbonic anhydrase 1 (hCA1)へと変更し、ラベル化条件の検討およびラベル化部位の同定に再度挑戦した。標的タンパク質をhCA1に変更したことに伴い、第一段階としてSEAL-tagの合成に再度取り組んだ。SEAL-tagリガンド部位には、hCA1と相互作用する事が過去に報告されているbenzensulfonamideを選択し、タグ部位にはフルオレセインを導入したSEAL-tagの合成を達成した。続いてラベル化条件の検討を行うことで最適ラベル化時間に関する知見を得るとともに、SEAL-tagの構造の最適化を行った。次にタンパク質混合物中のhCA1選択的ラベル化の検討を行った。本検討では、enolase、ovalbumin、hCA1、gultathione S-transferase (GST)共存条件下でhCA1選択的ラベル化が可能か検討を行った。その結果、hCA1選択的なラベル化が可能であることを明らかとした。hCA1およびCOX-1ラベル化実験の結果よりSEAL-tagはリガンド部位を変更することで、様々なタンパク質に適用可能であることが示唆された。現在、SEAL-tagによりラベル化されるhCA1のアミノ酸残基の同定に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の予定では、当該年度はCOX-1-indomethacinを用いてタンパク質ラベル化のメカニズムの検証を行うことを計画していた。しかし、COX-1がラベル化メカニズムの検証に不適であることが判明したため、モデルタンパク質をhCA1に変更しラベル化実験を行った。この結果、SEAL-tagのタンパク質汎用性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
変更したモデル標的タンパク質hCA1を用いてラベル化メカニズムの検証を行うことを計画している。その第一段階として、SEAL-tagにより蛍光色素などのタグが導入されるアミノ酸残基の同定を行う。続いてタグが導入されたアミノ酸残基を求核性を持たないアミノ酸に置換したhCA1を発現し、ラベル化メカニズムの検証を行っていく予定である。
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