研究課題/領域番号 |
13J07091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古橋 賢一 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微細藻類 / 炭化水素 / 抽出 / Botryococcus braunii / 培養 |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は、大きくして二つに分けられる。一つは微細緑藻Botryococcus brauniiからの炭化水素回収率が希釈海水培地下で培養すると上昇する原因の探索である。二つめは、希釈海水培地下での回収率の上昇とともに確認されたコロニーサイズの上昇が濾過速度に与える影響、また実際のプロセスで想定される大型ポンドから回収された濃縮藻体からのヘキサンを用いた炭化水素回収率を調べることにより、炭化水素生産プロセスの投入エネルギー改善の検討である。炭化水素回収率が上昇する原因を探索するために、メタボローム測定、培地に放出された糖量、熱水による糖抽出および構成糖の測定、コロニー表面のTEM観察等を行い、コロニー表面を覆っている層に変化が起こっており、それが炭化水素回収率に影響を及ぼしているであろうことが確認された。また炭化水素生産プロセスの濾過速度に関しては、昨年度実施した炭化水素生産および回収に最も適した培地浸透圧において上昇したコロニーサイズにおいて、重力濾過試験において非常に効率的に藻体回収を行えることが判明した。通常の培養では、重力濾過では濾過速度が極めて遅く、大量回収するには濾過面積・投入エネルギーが大きくなることが判明した。さらに、実際のプロセスで想定されるポンドから回収した濃縮藻体からのノルマルヘキサンを用いた炭化水素回収率を調べ、既存のプロセスと比較し、非常に短時間で抽出することが可能となり、コスト面・投入エネルギーが大きく改善されることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の一つであるミルキング(炭化水素抽出後残渣の再培養)に関しては現在までうまくいってはいないが、全体としての炭化水素生産プロセスでは、従来必要であった加熱処理をなくし、濾過プロセス、抽出プロセスでも、投入エネルギーを低減することが確認された。また回収率向上現象のメカニズムについてもより詳細にわかってきた。これらのことから研究は順調に進捗していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は上述した炭化水素生産および回収に最も適した浸透圧の検討と同時に、ミルキングの最適方法の検討を行うと述べた。しかし、ミルキング(炭化水素抽出後残渣の再培養)に関しては、様々な方法を試したが、炭化水素の圧搾や溶媒回収したB. brauniiの生存率が高くない。来年度よりは、新たに単細胞化という手法を取り入れながら、希釈海水培地下における炭化水素生産システムのエネルギー収支評価と同時に、ミルキングの検討を来年度も引き続き行っていく予定である。
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