研究課題
ダイレクト糊化の基盤技術の開発のために、高速せん断加工用ミキサーのせん断条件を操作して米ゲルを調製し、操作パラメータと米ゲル物性の関係を把握した。実験はダイレクト糊化物性制御システムを試作して行った。本システムはコンプレッサー、ボイラー、およびボイラーより供給される温水および冷却水が循環するジャケットに覆われたボウルで構成される。せん断速度を500~3000rpm、せん断時間を1~10minと変化させて米ゲルを調製した。米ゲルの物性(動的粘弾性)は、調製3h後に動的粘弾性測定装置を用いて測定した。その結果、貯蔵弾性率G'および損失弾性率G"は回転数の増加に伴い増加した。また、せん断時間が5minを超えるとゲル物性は平衡状態に達する傾向があり、さらに平衡後の動的粘弾性は回転数によって異なる値を示した。一方、麺用素材の開発のために、加工条件と米ゲル麺の物性との関係を調べた。ダイレクト糊化により調製された米ゲルを素材とし、押し出し式の製麺機を用いて米ゲル麺を調製した。糊化米調製時の加水量は重量比で米の1.0倍あるいは1.2倍、せん断速度は1500rpm, 撹拌時間は1~3分間で米ゲルを調製した。さらに、撹絆時の圧力が物性に与える影響を調べるため撹搾時の圧力を0.01~0.07MPaに減圧操作して米ゲルを調製した。測定項目は、米ゲルの動的粘弾性、米ゲル麺は破断試験とした。その結果、炊飯時の加水量が少ないほど、撹拌時間が長いほど、さらに撹拌時の圧力が低いほど米ゲルのG'およびG"の値は大きく、また米ゲル麺の破断応力は大きくなった。また、冷凍うどんと同程度の硬さをもつ米ゲル麺を調製可能であった。
2: おおむね順調に進展している
研究の第1段階であるダイレクト糊化の基礎技術の開発は、試作装置も完成し順調にデータも取得できている。さらに、第2段階の製麺技術の開発にまで到達しており、製パン技術に関しても現在データ取得中である。以上より、米を素材にしたダイレクト糊化技術に関しては当初の計画以上に進捗しているが、一方そば、小麦に関しては26年度より着手予定である。これは、まず米で技術をおおむね確立してから、他の素材の研究に着手した方が効率的であると判断した結果である。
ダイレクト糊化の加工条件とゲル物性の関係については、せん断速度、せん断時間、および温度などのパラメータと動的粘弾性の応答曲面を作ることを目標としている。また、米麺に関しては押し出し成形だけでなく、大規模生産用に麺帯に加工して製麺する技術の開発や、米粉とのハイブリッド製麺法に着手することも計画している。
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日本食品科学工学会誌
巻: 3 ページ: 127-133
10.3136/nskkk.61.127
International Journal of Food Engineering
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10.1515/jife-2012-0163