研究課題/領域番号 |
13J07110
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | トリアジン / 酸触媒反応 / アルキル化反応 / ベンジル化反応 |
研究実績の概要 |
最近我々が開発した新規酸触媒ベンジル化剤トリスベンジルオキシトリアジン(TriBOT)は,トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)のような酸触媒の存在下で,アルコールと反応して対応するベンジルエーテルを与える。TriBOTの3つのベンジル基が全て反応に利用可能であり,共生成物としてシアヌル酸を生じることから,TriBOTによるベンジル化反応はビスベンジルオキシトリアジノン(DiBOT)とベンジルオキシトリアジンジオン(MonoBOT)を中間体として進行すると考えられる。これら3つのベンジルオキシトリアジン誘導体(以下BOTs)は異なるヘテロ環骨格(トリアジン,トリアジノン及びトリアジンジオン)を有するため,酸触媒ベンジル化剤としてそれぞれ異なる反応性を示すことが予想される。そこで,BOTsの反応性を調べるべく,0.4当量のTriBOT,0.6当量のDiBOT,及び1.2当量のMonoBOTをそれぞれ用いて,0.2当量のTfOHの存在下で3-フェニルプロパノールの酸触媒ベンジル化反応を行った。その結果,TriBOTまたはMonoBOTを用いた場合に反応は高収率に進行した一方,DiBOTを用いた場合の収率はやや低かった。更に,TriBOTとDiBOTのベンジル基を反応性のないメチル基に部分的に置換したモデル化合物を用いて酸触媒ベンジル化反応の速度を測定したところ,その反応速度定数は同程度であった。一方で,MonoBOTの反応速度はそれらよりも大きいことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TriBOTの反応中間体であるDiBOT及びMonoBOT,更にこれらのモデル化合物を用いた速度論的実験を通して,ヘテロ環骨格の違いが酸触媒ベンジル化反応の速度に与える影響に関して定量的な評価を行った。その結果,DiBOTとMonoBOTはいずれもアルコールに対するベンジル化能を有しており,中でも従来にない新規骨格を有するMonoBOTが最も高い反応性を示すことを明らかにした。これらは種々の酸触媒アルキル化剤の開発を実施する上で重要な知見であり,当初の計画以上に研究が進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
MonoBOTのベンジル基を種々のアルキル基に変更したアルキルオキシトリアジンジオンは,高い反応性を示す有用な酸触媒アルキル化剤となり得ると考えられる。従って,現在までに確立したMonoBOTの合成法を応用し,種々のアルキル基を有するアルキルオキシトリアジンジオンを合成し,それらを用いた酸触媒アルキル化反応を実施する。また,アトムエコノミーに優れた酸触媒アルキル化剤であるトリアルキルオキシトリアジンの開発も継続して進展させる。
|